職業上の肉体的ストレスが多くの疾病を起こすことは多くの研究から明らかであるが, 職業上の心理的社会的ストレスに関しては明らかではない. このようなストレスは, 職業と関連した社会構造とその過程で生じ, 互いに関連をもったメカニズム(感情, 認識, 行動および生理的)によって労働者の健康に影響をもたらし, その結果は状況的因子や個人的因子で修飾される. このように, 職場環境-ストレス-健康の関係は, 多くのフィードバックループをもった動的システムである. 著者はこのシステム内の相互作用を疫学的, 実験的結果から概説し, 職業的ストレスや健康が行動に関連することと神経内分泌機構の重要性を強調した. そして今後の研究は, システム論的, 学際的, 問題解決指向的, 健康指向的(単に疾病指向的ではない)ならびに参加性指向的でなければならないことを提言した.
(この内容は1988年10月26日に行われた第8回産業医科大学国際シンポジウムにおける特別講演に基づくものである.)