Journal of UOEH
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いわゆる「肝・甲状腺炎症候群」の一例
田岡 賢雄三浦 良史尾関 恒雄阿南 郷一郎山田 伸次森田 翼
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1980 年 2 巻 4 号 p. 549-554

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抄録
われわれは抗サイログロブリン抗体, 抗ミクロゾーム抗体などの自己抗体が高値を示し, 肝に慢性活動性肝炎, 甲状腺に慢性甲状腺炎に一致する組織像を認めた深瀬らのいわゆる「肝・甲状腺炎症候群」と思われる一例を経験したので報告する. 症例は70才の女性で約8年前に始めて肝障害を指摘され昭和54年1月微熱と全身倦怠感を主訴として入院, 肝機能の異常を認め腹腔鏡により慢性活動性肝炎(前硬変), 肝生検により小葉改築傾向のある慢性活動性肝炎と診断. ほかに甲状腺腫は認められなかったが, 抗サイログロブリン抗体(サイロイドテスト)が1600倍と陽性であり, 抗ミクロゾーム抗体が6400倍(+), 抗DNA抗体80倍(+), と高値を示したが他の自己抗体は検出されず, 血沈1時間値48mm, γ-グロブリン2.9g/dl, IgG3560mg/dlと上昇していた. 甲状腺の外科的生検により, 限局性にリンパ球の高度浸潤, 甲状腺濾胞の縮小化, 濾胞上皮の肥厚を認め慢性甲状腺炎の初期像と診断した. 深瀬・伊藤(1971)は, 230例の慢性甲状腺炎のうち本症候群に属するものは12例であったとしてこれをまとめ報告しているが, かように本症は比較的稀なものと思われる.
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© 1980 産業医科大学
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