抄録
女性が安心して妊娠・出産ができ, 継続して就労できる職場環境や社会が求められている. 本調査では妊娠中の労働による母体や出生児への健康影響と心理的ストレスに関する国内の調査を検討することを目的とし, 関連する28文献を検討した結果, 就労妊婦は高率に異常を認めるとした調査が多数であったが, 労働による影響を明らかに実証したものはみられなかった. また就労状況や妊娠中の症状を詳細に調査した報告も認められなった. ストレスや不安に関する調査は心理テストを主体とする主観的評価法が行われており, ストレス関連物質を計測する生化学手法は行われていなかった. 今後の課題として, 就労形態や職種調査の標準的な指標の検討や, 家事労働に伴う労働負荷の調査を行い, 妊婦の生活全般を多角的にとらえる必要がある. ストレス測定に関しては生化学指標を用いたストレス測定も同時に行い, 多方面から妊婦の労働による影響を調査することが必要である.