2019 年 41 巻 1 号 p. 1-14
本研究の主な目的は,トナー製造従事者におけるじん肺症,肺線維症,肉芽腫性肺炎,肺がん,喘息などの呼吸器疾患のリスクを評価することである.第二の目的は,トナー粒子曝露と生体指標との間の関係について明らかにすることである.我々は2004年から2013年の間に日本におけるトナー製造従事者296名に対し10年間の前向きコホート研究を行った.トナー粒子曝露と健診結果の評価は各年ごとに行った.明らかな肺疾患発生は認められなかった.我々はまたじん肺,肺線維症,肺がんや喘息の発症前に関連する呼吸器系要因についてもスパイロメーターや質問票による調査を行った.しかしながら散発的な統計的所見は認めるものの,トナー曝露が総じて有害な生体影響を起こすという明らかな証拠は得られなかった.結論として,トナー粒子曝露が生体影響を起こす可能性は極めて低い.