Journal of UOEH
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筋骨格系慢性疼痛と労働時間・睡眠時間との関連性についての検討
安藤 肇 池上 和範菅野 良介野澤 弘樹道井 聡史白坂 泰樹近藤 三保井本 ひとみ志摩 梓河津 雄一郎大神 明
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2019 年 41 巻 1 号 p. 25-33

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抄録

日本においては慢性疼痛の有訴率が約10~20%であり,労働者の業務効率や生産性に影響を及ぼしている.慢性疼痛と睡眠時間については先行研究において関係性が明らかにされているが,労働時間が影響するか否かについては十分に検討されておらず,特に職域における筋骨格系慢性疼痛についてはほとんど報告がない.我々は118事業所を対象に質問紙調査を実施し,最終的に1,747名が解析対象となった.対象者は筋骨格系慢性疼痛あり群(n=448)となし群(n=1299)の2群に分類した.ロジスティック回帰分析にて,年齢,性別(基準:女性),労働時間,睡眠時間は有意に筋骨格系慢性疼痛に関連していた.労働時間を9時間以上と9時間未満に,睡眠時間を7時間以上と7時間未満に分類した4群で解析を行ったところ,労働時間が9時間未満・睡眠時間7時間以上群と比較して,労働時間9時間以上・睡眠時間7時間未満群では2.02倍(95%信頼区間:1.46-2.78),労働時間9時間以上・睡眠時間7時間以上群では1.47倍(95%信頼区間:0.94-2.30),筋骨格系慢性疼痛が多かった.筋骨格系慢性疼痛は労働時間が長い場合でも十分な睡眠時間を確保することで発症を減らせる可能性がある.このことから,産業保健スタッフによる適切な睡眠時間についての指導は筋骨格系慢性疼痛の予防に繋がる可能性がある.

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© 2019 産業医科大学
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