Journal of UOEH
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加味帰脾湯による薬剤性肺障害の1例
田原 正浩 山﨑 啓池上 博昭福田 洋子内村 圭吾立和田 隆野口 真吾川波 敏則城戸 貴志迎 寛矢寺 和博
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2019 年 41 巻 1 号 p. 51-56

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抄録

症例は89歳,男性.高血圧症,非弁膜症性心房細動,慢性心不全,高尿酸血症に対して内服治療中であった.耳鳴に対し加味帰脾湯の内服を開始後から,徐々に乾性咳嗽と労作時呼吸困難が出現したため,当科を受診した.胸部CTでは右上葉に周囲のすりガラス陰影を伴う非区域性の浸潤影と,両下葉のすりガラス陰影を認め,加味帰脾湯を含む内服薬による薬剤性肺障害が疑われた.被疑薬を中止し,スルバクタム・アンピシリン(sulbactam-ampicillin combination: SBT/ABPC)3 g × 2/日による治療を開始したが,症状およびすりガラス陰影と浸潤影の悪化を認めたため,精査目的で気管支鏡検査を施行した.気管支肺胞洗浄液ではリンパ球優位の細胞数増多の所見であり,薬剤誘発性リンパ球刺激試験(drug lymphocyte stimulation test: DLST)では,加味帰脾湯のみが陽性であった.経過および検査所見から加味帰脾湯による薬剤性肺障害が疑われたため,プレドニゾロン50 mg/日の内服を開始したところ,症状および画像所見の改善を認めた.これまで加味帰脾湯による薬剤性肺障害の症例は報告がなく貴重であり,投与開始後は呼吸器症状の出現に注意して,慎重な経過観察を行う必要があると考えられる.

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© 2019 産業医科大学
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