Journal of UOEH
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医師の偏在は子供の教育環境の影響を受けるのか?高等学校の偏差値が医師の地理的分布に及ぼす影響
松浦 志保冨岡 慎一松田 晋哉
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2021 年 43 巻 3 号 p. 367-376

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抄録

近年,医師の地域偏在対策として様々な取り組みがなされているが,その中で地域の教育水準が医師の地理的分布に与える影響に着目したものはない.本研究では,地域の教育水準と医師の地域偏在との関連を検証するために,政府等の公開データを用いて分析を行った.分析方法として多重線形回帰を用い,二次医療圏毎の人口10万人あたり医師数を被説明変数,偏差値60以上高等学校(以下 高校と省略)数,人口10万人あたり診療所数,人口10万人あたり病床数,高齢化率,外来受療率,人口密度,医学部の有無を説明変数とした.その結果,各二次医療圏において偏差値60以上の高校が1校でもあれば人口10万人あたりの医師数を有意に増加させ,さらに2校以上になると医師数はより増加することがわかった(P<0.05).加えて,私立高校を除き国公立高校のみを用いて分析した場合も,また二次医療圏における偏差値60以上の高校数ではなく,偏差値65以上の高校数を用いた場合も同様の結果が得られており,地域における入試偏差値の高い高校の存在が医師の分布に及ぼす影響は十分に確かであると考えられる.このことから,医師の地域偏在対策として,地域の教育環境を充実させることも検討すべきである.

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