Journal of UOEH
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中大脳動脈塞栓症に対するrt-PA療法直後に対側内頚動脈閉塞が生じた1例
武田 康 橋田 篤知二ツ矢 浩一郎竹下 洋平太田 浩嗣山本 淳考
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2023 年 45 巻 2 号 p. 133-139

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抄録

脳梗塞発症早期の神経症候増悪(early neurological deterioration: END)は,転帰不良とされている.このうち,recombinant tissue plasminogen activator(rt-PA)療法後のearly recurrent ischemic stroke(ERIS)は稀で,渉猟しえた限り21例しかなかった.左中大脳動脈閉塞に対してrt-PA療法直後に右内頚動脈閉塞症が生じた症例を経験したため報告する.症例:79歳女性.高血圧症,心房細動で加療されていたが,1年前自己中止していた.202X年1月X日自宅で動けなくなったため搬入された.傾眠で,左共同偏視,軽度の運動性失語と右片麻痺を認めた.MRI上左内包に超急性期脳梗塞を認め,左中大脳動脈は閉塞していた.発症2時間でrt-PA療法を開始し,意識レベルと失語の改善は認めたものの片麻痺の改善は乏しく,血栓回収術を念頭に脳血管撮影を施行した.左中大脳動脈は閉塞したままであったため血栓回収術を試みた.術中,嘔吐後昏睡状態となり,頭部CTを施行したが出血はなく,気管内挿管後,血栓回収術を再開した.Combined technique (3pass)で赤色血栓を吸引し左中大脳動脈は再開通できた.直ぐに右側の撮影を行ったところ,右内頚動脈は頚部で閉塞していた.同操作(2pass)で赤色血栓を回収し再開通させた.術後,意識障害は遷延したため集中治療を加えたが,CT上両側前頭葉に梗塞をきたした.最終的にmodified Rankin Scale(mRS)5でリハビリテーション病院へ転院となった.

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