Journal of UOEH
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くも膜嚢胞に併発したリウマチ性髄膜炎の1手術例
武田 康 橋田 篤知太田 浩嗣山本 淳考
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2023 年 45 巻 3 号 p. 185-190

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抄録

関節リウマチが中枢神経系合併症をきたすことは少なく,無治療では予後不良である.リウマチ性肥厚性硬膜炎は比較的知られているが,軟膜を侵すリウマチ性髄膜炎は稀である.一方,原発性くも膜嚢胞に髄膜炎が併発することは少なく,リウマチ性髄膜炎を伴った報告は極めて稀である.症例は77歳女性.関節リウマチで当院内科通院中,左下肢の脱力感を自覚し受診した.軽度左片麻痺を有し,MRI上右高位円蓋部冠状縫合後方にくも膜嚢胞を認めた.Fluid attenuated inversion recovery(FLAIR)像で嚢胞壁や接する脳表面の高信号とくも膜嚢胞内液の若干の信号上昇を呈し入院とした.髄液検査,細胞診および培養検査で異常はなかった.造影MRIで嚢胞壁や脳表は増強され,脳血管撮影検査では上矢状静脈洞の前1/2が低形成で,くも膜嚢胞直上に脳表静脈が集中していた.確定診断のためくも膜嚢胞除去生検術を施行した.嚢胞壁や周囲のくも膜は肥厚し,嚢胞と脳表静脈の接触部に細血管網と嚢胞底部に極微小白色結節を認めた.病理診断では炎症細胞の浸潤を認めたがリウマトイド結節の検出はできなかった.リウマチによる髄膜炎が疑われステロイド投与を行い,症状およびMRI所見は改善した.現在,再燃はなく外来通院している.

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