住宅総合研究財団研究年報
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大都市民間高齢者賃貸住宅の公的管理に関する調査研究(1)
広原 盛明垂水 英司中川 達哉神谷 東輝雄山本 善積
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1990 年 16 巻 p. 151-162

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抄録

 1.高齢者が健康かつ文化的で安定した住生活を営める高齢者住宅の基本条件は,①バリアーフリーの原則:住宅および近隣地域の物的環境条件が,高齢者の居住にふさわしい形態的・設備的性能を有していること。②アフォーダビリティの原則:居住コストの負担が,高齢者の所得に見合う妥当な水準にコントロールされていること。③セキュリティの原則:居住の継続や住み替えに関して高齢者の意志が尊重され,妨害や強要されたり差別されたりしないこと。④ヒューマン・ネットワークの原則:高齢者が家族,近隣,公共団体等の情報・生活福祉サービスのネットワークで結ばれ,コミュニティの中で孤立したり疎外されたりしないことの4点である。2.しかし京阪神3大都市では,①高齢者ヘの入居差別の顕在化,②インナーエリアヘの高齢者の集住と沈殿,③地代家賃統制令廃止にともなう急激な家賃値上げや「地上げ」による高齢者追い出しと居住不安の拡大など,高齢者問題と地域衰退問題が住宅問題に媒介にされて「日本型インナーシティ問題」とも言うべき状態が発現している。3.本研究では,このような大都市状況の下での今後の高齢者の居住二ーズを満たす高齢者住宅像として家族,友人,近隣集団,公共団体等とのコミュニティ・ネットワークで結ばれた「地域密着型小集団高齢者集合住宅」(略称:「地域高齢者住宅」という)ともいうべき新しい住宅タイプを想定し,その成立・可能性を需要サイドと供給サイドから追求する。

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© 1990 一般財団法人 住総研
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