住宅総合研究財団研究年報
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大都市における住宅開発と市街化の構造に関する研究(1)
タイ・バンコクを例として
渡辺 定夫岩田 司ノパナント タパナノント安藤 徹哉渡辺 誠介
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1990 年 16 巻 p. 251-261

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抄録

 東南アジアの発展途上諸国では,都市への人口の集中に伴う市街化の進行が著しく,特に首位都市において様々な都市問題が顕在化している。このような状況下において,良好な居住環境を持つ住宅地を育成するためには,直接的には例えばインフラストラクチャーの整備が急務である。それらを効果的に実行し都市全体の中で有機的に位置づけるためには,市街地の空間的特性と市街化のメカニズムを把握することが重要である。このような問題意識に基づき,本研究はタイ国の首都バンコクを対象に市街地の空間的特性と市街化のメカニズムを明らかにすることを目的とする。本年度の研究は,1974年,1984年,1987年の3時点の航空写真を基礎資料として,住宅地の開発形式別の土地利用現況図を作成し,住宅市街化の進行過程の分析を行なうと共に,現地調査により各開発形式ごとの住宅地の実態把握調査を行なった。本年度の研究結果は以下のように整理される。都心からの距離と住宅地開発の動向の関係は,都心から10㎞圏内のインナーエリアでは,1974年から1984年にかけての新規開発は活発でなく,安定した市街地を構成している。都心から20㎞圏内のミドルエリアは,新規開発が最も盛んで,時にチャオプラヤ川東岸はこの時期のバンコクの住宅地供給の主要な位置を占めている。20㎞圏以遠のアウターエリアは,市街化率も低く住宅開発が規制されている。これと区単位の住宅地開発の動向の分析結果を合わせて,バンコク市はインナーエリアー3地域,ミドルエリア2地域,アウターエリア1地域の合計六地域に区分された。さらに,1987年の土地利用図からチャプラヤ川東岸地域を4地区に分類し,併せて1989年8月に各地区の現地調査を行なった結果,区分された各地区毎に市街地の物理的特徴とその変容が特有であり,マクロスケールの分析における航空写真を用いた土地利用区分の有効性が確認された。

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© 1990 一般財団法人 住総研
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