住宅総合研究財団研究年報
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建物の区分所有が住宅・都市空間の変容に果たす役割と政策課題(1)
近江 隆北原 啓司阿留多伎 眞人
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1994 年 20 巻 p. 241-251

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抄録

 近年,都市部で大量に発生している区分所有ビルと称される建物は,半数以上の区分が住宅として機能しており,自営の業務や血縁者の集住,共同建替,地域再生等,都市居住に果たす役割の重要性を示唆している。本研究は,区分所有が住宅の需給関係や都市空間の在り方を根本的に変える契機を内在させているとの認識に立って,以下の課題の研究を目的としている。(1)マンションや区分所有ビルにおける賃貸住戸の役割とその政策的活用の可能性の解明。(2)区分所有建物の都心居住に果たす役割と共同建替の誘導方策の解明。(1)では大量に供給されたマンションの住戸,特に地方中核都市のそれが賃貸化し,ファミリー向け賃貸住宅の重要な供給源として機能している反面,マンション住戸活用の政策化課題として,住都公団での居住者の入れ替わりによる生活ルール上の行違いにおける管理問題があり,一方では,地方中核都市での各マンションごとの違いとともに,所有者・賃借人の債務問題をはじめ一部にみられる深刻な問題,それらの問題解決への公共機関や専門家・技術者に対する期待等,賃貸住戸活用に関しての施策に積極的な介入を望む傾向にあることがわかった。(2)では区分所有ビルの都心居住に果たす役割の重要性の反面,建物機能の混合性・雑居性・非区分所有への相互移行性・賃賃住宅と持家住居との相互移行性・所有者の離散等,それを住宅としてみると大変不安定な要因を内在させている。また,区分所有ビルの連坦は必ずしも良好な居住環境を形成しているとは言えず,こうした住宅および住環境に関わる不安定要因を安定化させ,都心居住とまちづくり形成を結び付けた地域の更新が図られる必要がある。区分所有を介しての共同建替はこうした契機を内包していると考えられる。

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© 1994 一般財団法人 住総研
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