住宅総合研究財団研究年報
Online ISSN : 2423-9879
Print ISSN : 0916-1864
ISSN-L : 0916-1864
地域の住宅生産技能者の育成に関する研究(1)
新技術・手法の導入と技能者の機能・役割
秋山 哲一浦江 真人遠藤 和義
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

1994 年 20 巻 p. 277-288

詳細
抄録

 本研究は,地域の住宅生産システムを担う既存の技能者育成制度に限界がみられ,また新しい技術や手法が導入されるという住宅生産システムを取り巻く環境が変化する中で,地域の住宅生産システムを安定的・継続的に維持していくための新しい技能者像とそれを育成する仕組みを検討しようとするものである。本年度は,地域の住宅生産技能者のおかれている実態とその育成の現状について,調査研究を中心に明らかにすることに重点をおいている。主な研究結果は,次の通りである。まず,既存統計調査の時系列的な分析をもとに住宅生産をめぐる技能者の需給の状況から技能者育成の緊急性を指摘した。次いで,建設省が全国の大工・工務店などを対象として実施した住宅関連技能者に関するアンケート調査の再集計を行なうことによって,大工・工務店の規模別の技能者のおかれている労働・環境条件の相違や技能者育成の状況の違いを明らかにした。更に,典型的な大手住宅メーカーと大工・工務店への詳細調査を通じて,それらの対比的な分析から,住宅生産技能者育成システムのタイプとその特徴を明らかにした。また,都市地域における技能者育成についても検討の視野に入れること,技能者の流動化が著しいため,単に戸建住宅生産システムの技能者問題として扱うのではなく,集合住宅生産の技能者動向も検討した方が技能者育成問題の理解を深めること,集合住宅の内装工事において新技術・手法の導入が盛んなことから,集合住宅の内装工事の技能者育成の実態を整理した。最後に,既に地域で技能者育成の取り組みの始まっている先進的事例を収集し,インタビュー調査をもとに地域技能者育成システムの現状と問題点を明らかにした。

著者関連情報
© 1994 一般財団法人 住総研
前の記事 次の記事
feedback
Top