住宅総合研究財団研究年報
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水平振動を対象とした人間の感覚に基づく確率手法による居住性評価(1)
視覚因子の影響と言語表現に関する分布
石川 孝重平田 京子伊村 則子野田 千津子久木 章江
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1994 年 20 巻 p. 359-368

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抄録
 居住環境の質的充足を求める声が高まっている今日,水平振動に関する居住性評価にも,様々な対応が求められるようになっている。我が国では,従来より体感による知覚閾を規範とした評価が主流を占めてきたが,より広い範囲で居住性を評価するためには,不快感や不安感などの,居住者の感覚に基づく許容限界を規範とした評価が必要である。本研究では,水平振動感覚に影響を与える周辺因子として視覚・聴覚因子を取り上げ,そのような自然な表現として言語に着目する。視覚因子を考慮した水平振動感覚を検討するため,被験者と視対象の相対的な動きを変化させた実験を計画し,従来の評価の規範である体感因子と対比させながら,視覚因子の基礎的特性を検討した。体感因子による振動の知覚は加速度に依存するが,視覚因子が存在する場合には視覚的に振動を認めるため,振動を知覚し始める点が大きく引き下げられる。すなわち,水平振動の知覚に対しては視覚因子の影響が大きく,水平振動を全く感じないレベルにおさえることは難しい。そのため,振動を感じた大きさや不快感などの心理的な反応を評価の規範とする必要がある。そのためには,加速度が大きく体感に対する刺激量が大きい範囲では,体感に対して支配的な決定要因である加速度を中心に評価しても,視覚因子の影響が強い,すなわち加速度が小さい範囲では,視覚因子に対して支配性の強い変位を考慮して評価することが必要である。一方,言語表現に関しては,SD法による実験の結果より,水平振動感覚を表現する言葉の特質を明確にし,振動の物理成分との関係を探る。それぞれの言葉は,加速度と関連した,感覚に働き掛ける強さを表す性質により分化することができる。それと独立して,刺激である振動を意味する言葉か,受け手である人間の状態を表す言葉かという,意味する対象の違いで分けることができる。このような性質は,SD法による既往研究においても一般的にみられる性質であり,ここでは,それらの性質が水平振動を対象とした場合に具体的にどのような性質を示し,どのような言葉と対応するのかを明らかにした。
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© 1994 一般財団法人 住総研
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