住宅総合研究財団研究年報
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下町型集住形式に関する研究
密集住宅地「根津」におけるケーススタディ
高橋 鷹志鈴木 毅横山 勝樹横山 ゆりか金 栄奭大月 敏雄刈谷 哲朗篠崎 正彦山添 英順
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1995 年 21 巻 p. 241-252

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抄録

 本研究は,下町の密集住宅地の建築・外部空間の仕組みに注目することによって,新たな都市集住形式(「下町型集住形式」)を模索することを目的としている。 建物間の残余空間や非常に狭い路地など,日本の都市に隙間的空間が多いことはしばしば指摘される。隙間は都市住宅の空間形式としては否定的に扱われることが一般的であるが,それが生みだす環境は,使いこなす居住者の社会的な規範とセットになって,我が国独特の都市集住環境を成り立たせている。 以上のような認識のもとに,本研究では,密集住宅地として東京都文京区の根津地区を調査対象として,住戸群および外部空間(通り,路地,隙間)の空間特性と社会的環境(社会的交流,領域認識,行動規範等)に関する調査を行なった。根津は,関東大震災,戦災の被害を免れた地域であり,歴史的な地割に沿った住戸群のまとまり,特に路地を中心とした4つの類型(通り抜け,袋小路,折れ曲り,複合形)の住戸群を読み取ることができた。住戸群は,通り,路地,隙間という外部空間を持つ。路地と隙間は,寸法と位置によっては全く機能しない場合もあるが,住戸の独立感,通風・日照,居住者が作業・手を加える空間,半公的な近燐の通り道,通りからの視線を通すことによる開放感,幅広いレンジの社会的コンタクトのアフォード(隙間を介した交流は,1階よりも,2階の部屋,物干し台にいる人どうしが多い)などの機能・役割を持つことが明らかになった。以上の分析結果,および近年の都市型集合住宅の提案事例を踏まえて,(1)路地・隙間などによる外部空間のネットワーク,(2)物的環境の適応性,(3)住み手と住まい,住まい方の多様性を中心テーマとした「下町型集住形式」のモデルスタディを行なった。

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© 1995 一般財団法人 住総研
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