住宅総合研究財団研究年報
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東京都心および隣接地域における高齢者の居住実態と居住の継承に関する研究(1)
家族の居住形態の変化と地域的住宅需要
松本 暢子大江 守之藤崎 宏子江上 渉
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ジャーナル オープンアクセス

1995 年 21 巻 p. 265-274

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抄録

 近年の単独世帯や高齢者世帯の増加,1家族当たりの子供数の減少などの一般的な家族の居住形態の変化は,地域的住宅需要と密接な関係を持ち,その地域の住宅の建替え,土地利用の変化や,定住人口の構造の変化に影響を与えている。これらを地域の状況に即して検討し,今後の住宅需要や居住構造を把握する基礎的資料を得ることが,本研究の目的である。研究の方法は,東京都心およびその隣接地域の典型的な住宅地を対象とした居住実態調査および住民票の分析,住宅の建替え分析を中心として,住民参加によるまちづくり活動や福祉サービスの状況などの観点からの間取り調査によっている。1983年に実施した墨田区東向島地域の「高齢者を含む家族」の実態調査を基礎として,その後の10年間の変化を追跡している。その結果に基づき,建築更新の速度は遅いものの,確実に地域の建築更新が進んでいる実態を示した。更に,既存資料では得られない「世帯分離した子供やその家族」と高齢者の居住関係を整理した。そして,高齢者の日常生活において,「町内会」に代表される人間関係の果たす役割を確認した。以上より,当該地域での居住継承の過程が,土地・住宅の保有,職業,地域社会との関係に規定されていることを結論付けた。今後の課題として,当該地域の居住構造の特性をより鮮明にし,住宅雷要との関係を検討することと,結果の妥当性を実証するために専用住宅地での実態調査が必要と思われる。

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© 1995 一般財団法人 住総研
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