住宅総合研究財団研究年報
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東南アジアの歴史的街屋建築に関する研究(2)
泉田 英雄ウィドド ヨハネス
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1996 年 22 巻 p. 147-156

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抄録
 東南アジアの街並みの特徴である街屋建築の成立経緯を明らかにすることを研究目的にし,1992年度はいわゆる東南アジア島嶼部(マレイ半島,ボルネオ島,ジャワ島)を対象としたのに対して,今年度はヴェトナムから南中国までの大陸部沿岸の歴史的都市を扱う。これでほぼ南シナ海沿岸に築かれ,現存する歴史的居住地とその住居建築を概観することになり,1992年度の研究成果と比較することによって地域全体の特徴分析を行なうことが出来ると考えられる。より具体的には,今年度新たに取り上げた歴史的居住地は,ヴェトナムのフエ,ホイアン,ロンスエン,南中国の福州と泉州で,これらの居住地パターンと街屋類型を実測調査で明らかにした。その結果,居住地パターンに関しては明らかに南シナ海沿岸では共通した特徴が見いだされた。一方,街屋建築に関しては全体的に室内空間の配置と使われ方に共通するものがあったが,材料と構法に大きな違いがあった。その理由は,大陸部沿岸の歴史的居住地では現地権力や先住民との関係が強く,また西洋植民地権力からの影響が希薄であったことが考えられる。背景には港市という地理的・社会的条件が強く働いており,これは城壁で囲まれ,その中に四合院あるいは三合院がひしめく行政都市とは分けて考えるべきものであろう。今日泉州や福州の旧港市部分でいくつかの歴史的街屋建築が現存していないのは,清代の海禁政策のせいでその居住地が衰退したためであろう。
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© 1996 一般財団法人 住総研
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