抄録
昼間の建築空間の照明は,昼光に依存するのが本来の姿である。また,近年,昼光の適切かつ有効な利用によって,昼間の人工照明に消費する電力の節減が強く要求されている。更に,建築空間の快適性に対する要求の高まりと共に光環境の快適性も重視されてきている。本研究は,住宅空間において,終日,季節毎,天候及び天空状況毎,人工照明の点灯や消灯,空間の様式などの種々の要因に関し,その時々の室内の光環境の変動を動的に捉え,住宅空間における昼光環境に関する有用な知見を得ることを目的とする。そのため,先に,様々な天候及び天空状況下で実際の住宅空間における昼光環境の実測調査を行なった。本報告は,実際の住宅空間の昼光環境の動的変動に関する実測調査研究に続くものであり,住宅の居室空間を想定した模型による実験研究に関するものである。今回の実測実験で得られた成果は,主として室内の反射率の構成に関するもので,おおよそ以下の通りである。1)一般的に,室内仕上げ面の反射率を高くするのが望ましい。2)一般的に,室内仕上げ面の反射率が低いと照明の質を劣化する。3)天井,壁,床の総ての仕上げ面の反射率が高いとモデリングを害することがある。とくに床面の反射率が低いときは注意する必要がある。4)天井,壁,床の総ての仕上げ面の反射率が低いと,昼光環境の照明の質にとって極めて危険である。本実験の結果では,天井,壁,床の反射率が80%,80%,20%,あるいは,80%,80%,5%が推奨できる。80%,50%,20%は限界である。これ以上反射率が高いときは,光の拡散性が大きくなり,モデリングが「平板的」になると考える。また,これ以上反射率が低いときは,光の方向性が強くなり,「どぎつい」になる。