住宅総合研究財団研究年報
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高密・高齢化地域における住宅地防災性能の整備に関する調査研究
阪神・淡路大震災住宅地復興計画研究
安田 孝馬場 昌子高田 光雄今井 範子森本 信明松原 小夜子田端 修
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1997 年 23 巻 p. 237-244

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抄録
 阪神・淡路大震災による被災地域は,現代日本の一般的な高密度居住地域であり,日本社会の高齢化に伴って高齢者比率の高い地区がモザイク状に分布している。また,それらの住宅地の多くは,昭和戦前期から1960,1970年代に開発された郊外住宅地であり,老朽化と共に,居住者の高齢化も進行し,防災性能は抵下しつつあったと考えられる。さらに,近年の地価高騰に伴う敷地面積の小さい住宅地開発や共同住宅の建設によって,住宅地としての高密化が進行し,防災性能を低める結果を招いていた。その結果として,震災死者や仮設住宅居住者の中での,著しく高い高齢者比率として顕在化したのである。本研究では,このような仮説のもとで,阪神間の宝塚,伊丹,尼崎の3市を事例として,高齢者率の高い地区を抽出し,60歳以上の高齢者に,被災実態,防災意識,高齢化対応増改築などに関するアンケート調査を実施した。その結果,斜面住宅地をはじめとする,これまでの戸建住宅地開発は,高齢者の防災安全性の視点からは,再検討と改善を必要とする事項が少なくないことを明らかにした。これまでの建替や改造によって,安全性能の向上と高齢化対応の実現がなされている住宅もあるが,不十分な住宅も多いことが示された。その対策としては,まず,居住者自身に対する住教育,環境教育による主体的改善の推進が必要であろう。また,高齢者自身の現住地定住意向は強く,一方で,避難場所を知らない場合も少なくないことなどから,日常生活に組み込まれた防災施設の整備が必要なことが示された。
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© 1997 一般財団法人 住総研
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