住宅総合研究財団研究年報
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障害を持つ児童生徒の個別教育計画とハウスアダプテーションに関する研究
建築・教育・医療によるサポートシステム
野村 みどり吉田 燦落合 俊郎上野 義雪平野 俊徳海背 茂四下 浩文木之瀬 隆高山 あかね今村 信行高島 直子脇本 瑞江
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1999 年 25 巻 p. 165-176

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抄録
 本研究の目的は,障害を持つ児童生徒の個別教育計画におけるハウスアダプテーション(HA)のあり方を明確化し,それを達成できるサポートシステムのあり方を求めることである。このため,まず,アメリカの個別教育計画(IEP),個別家族支援計画(IFSP),個別移行計画(ITP)を参考に,IEPにおけるHA支援の位置づけを明確化した。次に,横浜市立肢体不自由養護学校全5校を対象に,家庭と学校における実態調査を実施した。5校に在籍する33名を対象に実施した保護者への自宅訪問面接調査結果からは,HAニーズは,常時必要な医療的ケアと安全性の確保,移動・排泄・入浴時の介助等にみられた。3校における16名の児童生徒と担当教師の行動観察,教室の校具収録調査結果から,医療的ケア,うつ熱傾向,低体温傾向など特定の環境設定,個別使用が基本となる特定の福祉用具の活用と専用コーナー確保の必要性の高さが認められた。しかし,狭い教室は床座や床臥位姿勢による一斉活動や給食にも使われるため,これは困難である。教室の温湿度調査からは,通常の空調としてはまずまずであるが,全児童生徒の4割弱は体温異常を有するため,個別環境設定は不可欠である。一般的な抱っこ移動による教師の介助負担の軽減,安全性の確保のためには,リフター導入の必要性は高く,このためには,和風の床面活動から,洋風の椅座位活動への転換など全面的な見直しも必要である。天井面走行リフターを1校の室内温水プールに設置し評価実験した結果,教師の分業体制が進み,指導形態も改善できた。姿勢保持装置やリフターなど福祉用具活用は,点的使用にとどまっており,線的面的使用を促すためには更なる個別化が必要である。総じて,養護学校には,個別教育計画に基づくHAのデータベースとコーディネート機能を整備しつつ,教育内容・方法についても総合的に再検討していく必要性が高いことを明らかにできた。
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© 1999 一般財団法人 住総研
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