住宅総合研究財団研究年報
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戸建中古住宅の質確保に関する研究
豪州とU.S.A.の住宅購入前検査と住情報
中野 迪代一棟 宏子ペンターガスト ドナ
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1999 年 25 巻 p. 201-212

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抄録
 目的:本研究は住宅の長寿化を重視し,既存戸建て住宅の質の確保を目指している。中古住宅市場の活発な豪州とU.S.A.において,近年急激に普及している住宅の購入前検査の内容と現状を捉え,その実効性確立のための条件整備の動向を明確にする。また,中古住宅の質と安全性に対する買い手の関心と,需要者向き住情報の現状を把握する。これらを通して,戸建て住宅所有者が社会的に果たすべき役割と責任,それを支援する社会的条件を探り,良質な戸建て住宅ストックの増加に有効を指針を得ることが目的である。研究内容と方法:本研究内容は,第1に住宅購入前検査について,仕組み,担い手,社会的位置づけ,買い手の関心などを多面的に分析する。第2に需要者向き住情報に関する買い手の利用状況と,買い手を支援する住情報の現状を捉える。 豪州はクイーンズランド州ブリスベン市,U.S.A.はカリフォルニア州フレズノ市を対象地域に選び,両市で1997年8~12月に次の6種類の調査を実施し,比較した。①不動産業者と州・市の関連機関への面接調査,②住宅検査事務所と金融機関への電話調査,③需要者へのアンケート調査(豪州は有効291件の訪問面接調査,U.S.A.は有効100件の訪問配付郵送回取調査),④住宅検査実施事例調査(7件),⑤需要者向け住情報講座への参加・観察調査,⑥検査報告書事例と住情報資料収集。結果:住宅購入前検査は,敷地・建物・設備について簡単な道具を使用して視覚的に行なう。報告書では不良個所や改善・補修すべき個所を指摘し,買い手に購入決定のための判断情報を提供し,契約解消権と価格や補修の交渉権に根拠を与える。また,住宅の売買契約トラブルを避け,買い手に住宅全体の現況を知ることの重要性を再認識させ,購入後に買い手が補修や改善の具体的計画を立てやすくするなど,既存住宅の質確保に有益だといえる。なお,U.S.A.では豪州より住宅購入前検査という新業種の発展を促す条件整備が進んでいる。
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© 1999 一般財団法人 住総研
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