住宅総合研究財団研究年報
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木造住宅の倒壊モードの解明と耐震性能評価法の確立
槌本 敬大安藤 直人有馬 孝禮中島 史郎岡崎 泰男中村 昇
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1999 年 25 巻 p. 259-270

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抄録
 木質構造物の破壊,倒壊の可能性を判定するべく非線形動的応答解析を導入するにあたって,木質構造躯体の荷重の流れ,動的破壊機構の実験的探求を目的として,載荷試験,解析等を行なった。その結果得られたことを抜粋すると以下のようになった。軸組構法実大住宅構造物の静的水平載荷試験から,(1)各壁線変形量の差異は偏心率の大小に巨視的には依存するものの,同一偏心率でも変形量分布に大きな差が生まれる場合もあり,偏心率では精確に評価し得ない。(2)2階小屋梁載荷時に下屋部分はその直近内側の壁線に追従して変形するが,2階床梁載荷時には追従せず,小屋組の水平構面剛性はかなり低い。(3)水平構面の有無は変形量分布の均等化に大きく影響するが,床面材料の複層化の寄与は小さく,高剛性化には根太施工方法等からの抜本的な改善が必要である。(4)加力方向に直交する耐力壁も,建物の剛性耐力への寄与は無視し得ない。ことが判明し,筋違い壁の振動台上での破壊実験から, (5)本実験に供した筋違い壁は,1.5~2kNまでの水平力に対して,筋違いや柱が引き抜けて破壊こそすれ,倒壊には至らなかった。(6)本実験の仕様の耐力壁においては,筋違いに圧縮応力が作用する側の水平せん断変形角は,筋違いが座屈しているにも関わらず引張側より小さく,いずれの仕様も引張側で破壊した。(7)柱,筋違いともに項部より脚部が先に引き抜けるとは限らない。(8)壁長の違いに起因する筋違いの角度は破壊の発生順を差配している可能性がある。(9)動的載荷時には静的載荷時になかなか生じない金属破壊が釘や木ネジに起こる。ことがわかった。
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© 1999 一般財団法人 住総研
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