抄録
本研究では,フランスにおける20世紀初頭の田園都市の典型的な例としてパリ郊外シュレンヌ市田園都市を対象とし,セーヌ県低廉住宅公社の議事録と,シュレンヌ市博物館所蔵の住宅平面図をおもな資料として分析したものである。その結果,中層集合住宅が主体となったという単純な事実のほかに,フランス特有の制度的な枠組み,建設主体の理念や組織内でのさまざまな議論,土地取得や建設事業のための予算処置,住宅タイポロジー,などが判明した。近年,イギリスや日本だけでなく田園都市の世界的広がりを示す研究成果が多いなかで,本研究はそのフランスの文化や社会的背景を反映したひとつの例の特殊性を明らかにしたと考える。