抄録
北京では1990年以降,危険・老朽住居の建て替えを,都市再開発および主宅制度改革と結合させて大規模に実施している。本稿では崇文区を事例対象とし,事業対象住民に対するインフォーマル・インタビューから,住み替えに関する住民の生活実態,認識の仕方を具体的に記述した。そこから,経済力の有無によって新しい居住空間を享受して戻り入居する人々と,遠方へ地区外移転せざるを得ない人々とに分極化していく現状,住民の社会生活上の影響を考慮した施策が不十分な点,事業実施過程において住民のあいだに不公正感を醸成している点を指摘し,いくつ力の改善案を検討した。