抄録
本丸御殿を再建する際には,それまでの建物を踏襲して設計された。そこで本研究では,弘化度と万延度の矩計図・建地割図の異同を明らかにした上で,弘化度と万延度の矩計図・建地割図の関係を明らかにすることを試みた。その結果,建地割図は,主要な御殿や殿中席,玄関,表御舞台などの重要な建物について描かれることが明らかになった。また,万延度の矩計図において基準線を変更している御高盛周辺の場合,平面図の変更に関連して,矩計図,小屋伏図の順で作図されたこと,さらに万延度の御小座敷の建地割図の分析から,万延度設計時に弘化度の建地割図を書き写した後に平面が変更された経緯も明らかになった。