都市デザインを専攻し,ル・コルビュジエのアトリエで学んだ吉阪隆正(1917-80)は,とりわけ住宅と都市の分野において,現在も考慮に値する数々の成果を生み出した。本研究では,彼の住宅・都市理念の形成過程と特質を,旧蔵資料や論考に基づいて検討した。その結果,終戦前に獲得していた「建築地理学」の方向性が,戦後の幅広い研究交流を糧に独自の「住居学」に結実し,留学中のル・コルビュジエとの出会いが彼と「住居学」の読み替えをもたらした過程が明らかになった。また,それらの総合としての吉阪の住宅・都市の理念が,人間の行動を中心に「住居」の延長として「都市」を捉えることなど,7項目の顕著な特質を持つことが判明した。