住宅総合研究財団研究論文集
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34 巻
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  • 居住不安に関する研究
    河邊 聰, 平家 直美, 林 茂, 吉田 光一, 木村 忠紀, 堀 榮二, 遠藤 康雄, 志村 公夫, 冨家 裕久, 内藤 郁子, 野村 正 ...
    2008 年 34 巻 p. 433-443
    発行日: 2008年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
    京都の都心部には,平成12年の調査で3万戸の伝統町家があることが分かっていた。その後年々数は減少しているといわれる。町家では日々の生活が営まれ,その上で都市的・文化的価値の高さが語られる。(財)京都市景観・まちづくりセンターは,京町家居住者からの様々な相談に応じる町家相談会「京町家なんでも相談」を平成13年度に立ち上げた。本稿は,この相談会に寄せられた町家居住者からの相談内容をヒアリング形式で間接的に学習し,それを参考資料とした。資料から居住にかかわる不満・不安を抽出・分析し,問題点の把握と理解をした上で,今後居住不安解消の具体案を策定し,居住者への居住支援方策を提示したいと考える。このことから京町家の保全・継承の環境づくりに寄与したいと考えるものである。
  • ソウル・大邱での日本統治期土地区画整理事業の実態と戦後の変貌
    石田 潤一郎, 中川 理, キム ジュヤ, 北尾 靖雅
    2008 年 34 巻 p. 373-384
    発行日: 2008年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は,1930年代以降,韓国の郊外住宅地がいかにして形成され,どのように変容してきたかをソウルと大邱の土地区画整理事業地について探ったものである。「京城府」による10地区,「大邱府」による2地区について,その具体的な計画内容を把握し,そこでの日本人都市計画技術者の理念を解明した。これまであいまいであった戦時中の施行進捗状況を明確にするとともに,戦後の変容を調査した。その上で,「京城府」西郊の大?地区を詳細に調査し,日本人による「外庭・低建蔽率」イメージに基づく計画が,戦中・戦後の韓国都市の状況と齟齬を来たしていく過程を明確にした。
  • 建設後,長期間経過した事例を通して
    丁 志映, 小林 秀樹
    2008 年 34 巻 p. 385-396
    発行日: 2008年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
    日本のコーポラティブ住宅は,建設当初から居住者が参加するところに特徴があり,それにより良好なコミュニティが生まれるといわれている。しかし,建設当初の居住者のコミュニティは,建設から月日が経つとともに,入居者の入替わりや高齢化により薄れつつあると考えられる。本研究では,建設後20年以上経った37事例と10~19年経った21事例のコーポラティブ住宅を研究対象とし,アンケートおよびヒアリング調査により,経年に伴う住まい方やコミュニティ活動の変化,住戸の中古売買や賃貸化の状況,および建物大規模修繕や維持管理の状況について明らかにし,年数を経たコーポラティブ住宅の再生手法の提案を行った。
  • オランダ住宅団地再生におけるサステイナブル・デザインの検証
    田口 陽子, 川上 正倫, 橋本 朋子, クリンカース クーン
    2008 年 34 巻 p. 397-407
    発行日: 2008年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では,住宅地計画におけるサステイナブル・デザインの検証を目的とし,再生事業が行われたオランダのバイルマメーア住宅団地を対象に,外部空間の多様化を住棟立面と屋外領域の複合により把握することで,それぞれの状況形成を表出要素により確認した。まず事業計画を検討することにより,23の外部空間に面する94事例の住棟立面を抽出した。また,関係者へのインタビューの意匠操作に関する内容から,住棟立面および屋外領域に関する外部空間の構成要素を抽出した。住棟立面と屋外領域における要素の複合から9タイプの断面構成を見出し,各断面構成における表出要素を検討することで,外部空間の構成が状況形成に寄与していることを確認した。
  • 地域社会における居住支援のネットワーク化を推進するために
    宮崎 幸恵, 鈴木 博志, 児玉 道子
    2008 年 34 巻 p. 409-420
    発行日: 2008年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
    共生型のまちづくりを推進していくためには,行政のみの支援だけではなく,行政と民間事業者との協働による取り組みが重要である。本研究では,NPO等が小規模多様型施設(宅幼老所等)を開設するに際して資金等を助成している滋賀県,長野県の事例を調査した。多様な階層が利用できる場づくりは,少子高齢社会における居住支援策として重要であるが,運営面での課題も多い。課題を解決していくためには,行政と連携しながら,施設間のネットワークを強化していく必要がある。
  • 成人同居期の住まい像を探る
    松原 小夜子, 室 雅子
    2008 年 34 巻 p. 421-432
    発行日: 2008年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
    成人した子と親がともに暮らす「成人同居期」の実態を生活面の自立という視点からとらえるために4つの調査を行った。その結果,「生活面の世話」「生活音」の二つが主たる問題であることがわかった。これは,子が20代よりも30代の場合に一層顕在化し,男性の子では,高齢化する親が,子の生活の世話,生活リズムの違い,生活音に悩み,女性の子では,むしろ親が子を頼りにする様子が浮かび上がった。成人同居期の暮らしには,子・親,男・女ともに生活面の自立能力を身につけ互いに協力共同することが求められ,住まいの点では,子と親の部屋の適度な距離と独立性,防音性能,トイレ・洗面等の複数設置などの工夫が必要である。
  • 中島 熙八郎, 中園 眞人, 小峯 裕, 山本 幸子
    2008 年 34 巻 p. 41-52
    発行日: 2008年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
    団塊の世代は1970年以降,その一部が大都市圏から地方県に向かうが,人口予測からも,特に強い地方回帰傾向は見られない。地方の町村では,近年,転入人口が一定の水準を維持するものが見られ,I・Uターン者の存在が伺われる。ただ,年齢的には25~34歳の転入が目立つ。また,これらの町村では,世帯主が60歳以降に,その世帯数は減少し,退職後世代I・Uターン者の持家指向とともに,その継承意識の弱さとも相俟って,多くの空家の発生が見込まれる。島根県では,行政による空家の借上げ+改修等助成など優れた制度が見られ,その普及と習熟による,空家等居住環境ストックの,より若い世代への継承・活用が重要となっている。
  • キューバ島を焦点として
    布野 修司, ラモン ホアン ヒメネス ベルデホ , 応地 利明
    2008 年 34 巻 p. 53-64
    発行日: 2008年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
     本研究は,「植民都市空間の起源・変容・転成・保全に関する調査研究」と題する植民都市研究の一環であり,キューバのスペイン植民都市を対象とし,その拡大深化を計ることを大きな目的としている。考察の大きな基盤とするのは,セビージャのインディアス古文書館に収蔵された植民都市関連地図資料である。まず,都市図をもとに,インディアス法との比較を視点として都市モデルの類型を明らかにしている。また,臨地調査によって得られた資料を加えて,街路体系,街区組織,宅地割に焦点を当ててその変容(変わるものと変わるもの)について考察している。
  • 中国両広とベトナムを中心に
    長沼 さやか, 塚田 誠之, 浅川 滋男, 張 漢賢, 山形 真理子
    2008 年 34 巻 p. 65-76
    発行日: 2008年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
    The purpose of this study is to identify the land settlement process and the changing of dwelling system of boat people in the river basin and the coast of Guangdong,Guangxi provinces of China and Northern Vietnam. Like “Danmin”in China, there are still a lot of people dwelling on the water in Southeast Asian countries. However, in Southern China, boat people have already moved on the land under the state policies. Some cases of land settlement have been progressed by the boat people themselves independently but it can be read that most of it occurred under the rapid and compulsorily enforcement of state power.
  • 旧吹田村と千里ニュータウンの比較による分析
    吉村 英祐, 生川 慶一郎, 宮本 京子
    2008 年 34 巻 p. 77-88
    発行日: 2008年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
    旧集落と千里ニュータウンを対象に,防犯環境調査,住民の治安意識の調査,地区内の地域安全マップの作成に基づき比較・分析した結果を各地域に還元することを通して,大学が防犯まちづくりを支援するモデルのありかたを検討した。地域のニーズを的確に把握する調査項目や調査方法を検討し,地元の協力を得て調査を実施すること,調査結果を地元にわかりやすい形で報告し,研究成果を地域に還元していく姿勢が重要である。地域・行政・大学の三者が信頼関係を築き,協働することで,地域が自立的に安全・安心まちづくりを継続的にスパイラルアップしていくことが可能になる。
  • 増井 正哉, 喜多 順三, 三浦 要一, 三宅 正弘
    2008 年 34 巻 p. 89-100
    発行日: 2008年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究のねらいは,集落景観を形成・維持・管理してきた伝統的システムの機能・組織等を明らかにしたうえで,過疎・高齢化などにより機能しなくなった部分について,どのようなサポートを行うべきかを実践的に提案することにある。対象は2005年12月に重要伝統的建造物群保存地区に選定された徳島県三好市東祖谷落合集落とし,伝統的環境維持システムの変容について調査して,集落景観を保全していくうえでの課題を明らかにした。さらに,今後必要と考えられる集落外からのサポートのあり方について提案した。
  • 新井 信幸, 大月 敏雄, 井出 建, 杉崎 和久
    2008 年 34 巻 p. 101-112
    発行日: 2008年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は,在日コリアンが集住する戸手四丁目河川敷地区の形成から解体までを記録し,同地区の住環境運営の特性について明らかにすることを目的とする。その結果,以下について明らかになった。同地区は1960年前後の数年間に在日コリアンにより形成され,その後,初期居住者によるインフラ整備,賃貸経営,及び教会による生活支援が実施され,社会的弱者の受け皿で,かつ多様な生活スタイルを受け入れるまちになっていった。同地区の大部分は2006年に再開発によって解体され,ほとんどの居住者は地区外へと転居していった。
  • 南廊下型立体路地の利用実態と住民意識調査(設計者の視点から)
    江川 直樹, 丸茂 弘幸, 小浦 久子, 岡 絵理子
    2008 年 34 巻 p. 113-124
    発行日: 2008年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
     和歌山県御坊市営島団地は,住民参加の手法で建設された集合住宅団地であり,一般的な集合住宅団地では実現できない南廊下型立体路地を大々的に取り入れた事により,学会で高く評価されている。本研究は,島団地の立体路地の居住者による使われ方,評価を調査することにより,南廊下型立体路地のもつ意味と,問題点を明らかにした。調査の結果,立体路地では,地面以上にさまざまなモノが溢れ,地面と同様あるいはそれ以上に居住者の行動が表出しており,居住者が接地性が高いと感じる事の出来る集合住宅となっていた。一方で,トラブルはないものの自分の領域が守られていないと感じる居住者もいる事が明らかとなった。
  • 速水 清孝, 林 憲吾
    2008 年 34 巻 p. 125-136
    発行日: 2008年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
    建築家・市浦健が建築界に残した足跡を包括的に明らかにし位置づける研究の端緒として,本研究では次のことを行った。(1)市浦の設計事務所開設以前の作品の収集と分析,(2)戦時下の建築新体制構想において果たした役割の解明,(3)戦後,日本建築家協会会長を辞した後に示した建築家法の提案の背景とその意味の解明,である。ことに(1)・(3)では,晩年には,庶民住宅を中心に活躍したと自らを振り返る市浦と住宅との関係を通して,これらを明らかにしている。
  • 行動経済学の観点からの住宅金融と,その住まい方への影響の分析
    沓澤 隆司, 大竹 文雄, 水谷 徳子
    2008 年 34 巻 p. 137-148
    発行日: 2008年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
    今日の日本の住宅ローン市場は,フラット35と呼ばれる証券化を通じた長期・固定ローンが供給される一方で,民間からは多様なローン商品が供給されるなど急速に変化している。こうした変化を分析するため,利用者のローン選択の要因,期限前償還,借り換え,延滞等の要因について操作変数法,比例ハザードモデル等を用いて推定した。この結果,金利水準の変化,利用者の危険回避度のほか,居住の移動可能性や新築中古の別などが影響し,金利上昇がローン選択の変化を通じて住宅需要を下落させることがわかった。また,証券化のために発行されるMBSの投資家は,株式よりはリスク回避的であるが,公社債よりは収益性重視の傾向が認められる。
  • 住まい方の多様性から住宅市街地の持続性をみる
    徳尾野 徹, 小野 英道, 杉山 茂一
    2008 年 34 巻 p. 149-160
    発行日: 2008年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は,個人事業主による小規模コレクティブ住宅が,既成住宅市街地に立地する集合住宅として大きな可能性を持つことを明らかにすることである。神戸市・大阪市・徳島市の3事例を対象として,ヒアリング調査,アンケート調査,観察記録調査を実施し,建設動機・計画プロセス・運営の実態,居住者の入居理由や評価,コモンスペースの使われ方を探った。以上の調査結果から小規模コレクティブ住宅が多様な住まい方を許容し,住宅市街地の持続性に寄与することが分かった。その一方で,安定した質の確保と潜在的な入居希望者に対する広報に課題があることも明らかになった。
  • 建物先行型論と棟持柱祖形論にもとづく建築コラージュ形態史論
    土本 俊和, 坂牛 卓, 早見 洋平, 梅干野 成央
    2008 年 34 巻 p. 161-172
    発行日: 2008年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は,京マチヤが生成される過程として原形と変容をあつかい,京マチヤが他地域につたわる過程として伝播をあつかった。この三者をあつかう際,建物先行型論と棟持柱租形論という研究蓄積をふまえた。その上で,原形と変容をあつかう際,建築コラージュという観点をあらたに導入し,伝播をあつかう際,建物条件付き都市という観点を導入した。建築遺構と考古学的発掘という従来の資料を基確としつつ,以上のあたらしい観点にもとづいて,京マチヤを再検討し,以下の仮説をえた。京マチヤは市立ての最小単位であり,その地方への伝播は都市形成の最初期に特定の都市域に対する建物条件として京マチヤが採用されたことによる。
  • 個室分離型から居間中心型への移行
    花里 俊廣, 篠崎 正彦, 山崎 さゆり, 伊藤 俊介, 佐々木 誠, 渡 和由, 上北 恭史
    2008 年 34 巻 p. 173-184
    発行日: 2008年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は,隣接グラフによる類型化に基づき集合住宅住戸の変遷を再検証したものである。研究の第一段階では,公団の標準設計,公営住宅,超高層集合住宅,コーポラティブ住宅,建築家による集合住宅の提案など対象となる住戸を特徴あるグルーピングに分けて調査・分析し,近年,様々に提案される新しい住戸には居間の中心性を高めた間取りが多く提案されていることを示し,その現代的な意味を考えた。研究の第二段階として,隣接グラフによる空間構造の分析に基づき,集合住宅の導入期から現在までの住戸平面の変遷を通史的に概観する年表を作成した。
  • 小池 孝子, 定行 まり子, 井本 佐保里
    2008 年 34 巻 p. 185-194
    発行日: 2008年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は,市街地に1960-70年代に建てられた高層高密度団地の共用スペースに着目し,団地活性化の方策について考察を行うものである。住棟一階共用スペースについては,築後30-40年が経過する中で時代のニーズに合わせてその機能を変えているが,特に子ども施設への転用が多く見られる。団地居住者の少子高齢化が進む中でも,共用施設の役割が居住者だけのものから周辺地域のものへと変化させた事,団地の空間環境が子どもの遊び場に適している事から,子ども施設への転用が続いていると考えられる。一方,居住者も子ども施設の存在が団地に活気を生むと評価しており,空店舗増加等,荒廃化が進む団地において,今後子ども施設が団地再生,地域コミュニティ発展の核として役割を果たすことが期待できる。
  • 日本植民地期以降の〈眠床〉-〈和室〉の結合とそのゆらぎ
    青井 哲人, 角南 総一郎, 陳 正哲, 張 亭菲
    2008 年 34 巻 p. 195-206
    発行日: 2008年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
    台湾漢人の間では,住宅内の房間(居室)の一部ないし全部に床を張り,その上に雑魚寝する生活が広く行われてきた。この揚床をホーロー語で「総舗chóng-pho」と呼ぶ。地床に眠床(寝台)を置くのが常識とされる漢人住居になぜこのような特異な変容が生じたのか。本研究では植民地期における台湾家屋・日本家屋の交渉関係をこの「床」の存在に注目して検討する。彰化縣田中(市街地),台南市湾裡(村落)での集中的な調査と,台湾各地での事例収集の成果を踏まえ,総舗の現存状況や類型を把握した上で,(1)起居様式,(2)」家族社会,(3)文化意識,(4)材料と技術,の各視点に沿って現段階での知見を示し,総舗を歴史的に位置づけるための仮説と課題を提出する。
  • 地域性による位置づけとニーズの相違に着目して-
    山田 あすか, 上野 淳, 松本 真澄, 井村 理恵, 佐藤 栄治
    2008 年 34 巻 p. 207-218
    発行日: 2008年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿ではまず,全国の事業所へのアンケート調査,抽出事例でのヒアリング・観察調査によって宅老所・小規模多機能施設の全国的概況と運営実態,「宅老所はどのような特徴をもち,どのような人を対象に,どのように運営されているのか」を把握した。次に,地域特性を[都市・市街/都市・郊外/地方][駅近/駅遠]に分類し,独居・同居の別や就労など家族・介護者の状況,介護観,高齢者施設整備の状況,近隣他者との関わり方,など介護ニーズの地域差を生む要因を整理した。さらに,3地域5事業所の利用者の利用圏域や家族の状況等の詳細な調査をもとに,地域の特性と介護ニーズの関係,地域性に根ざした宅老所のあり方について考察した。
  • 肢体不自由児の住宅における生活環境に関する事例研究
    大崎 淳史, 佐藤 勇規, 井出 愛子, 山田 祥子, 杉山 弘子, 木之瀬 隆
    2008 年 34 巻 p. 219-230
    発行日: 2008年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
    肢体不自由の障害をかかえる子ども(以下,肢体不自由児)のための生活環境デザインの指針を求めるため,肢体不自由児の住宅事例を対象に,天井走行式リフターを導入した場合の生活への効果・問題点について明らかにした。対象は国内が2事例,ノルウェー国が1事例である。調査・考察をすすめ,次の結論を得た。肢体不自由児の充実した生活環境の構築には,(1)「生活の質」を追求できる住宅空間のデザイン,(2)「責任グループ」の確立,(3)リソースセンター機能の検討が必要だと考える。
  • 石垣 文, 本間 敏行, 徳川 直人, 米川 文雄, 藤田 毅
    2008 年 34 巻 p. 231-242
    発行日: 2008年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
    要養護児童のためのグループホームにおける住環境と地域化を考察した結果,1.GHの家屋選定は,室面積や本体施設との距離,周辺環境や住民の顔ぶれ等が考慮されていたものの,様々な制約の中で選択余地のないホームも確認された。2.職員の築いてきた社会関係をもとに,GHは近隣住民等からの理解・支援をうけており,3.GH入所児は本体施設入所児に比べて,施設外の子どもや大人との関わりが活発である傾向がみられた。一方で,4.関係構築には数年程度の歳月と職員の多大な努力,良き理解者を必要とし,また職員の年齢や勤務体制の影響が大きいこと,などが明らかとなった。
  • 全 泓奎, 稲本 悦三, 金 善美, 南 垣碩, 趙 鼎九, 金 倫伊, 丁 恩一, 金 種漢
    2008 年 34 巻 p. 243-254
    発行日: 2008年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は,社会的な不利地域における居住支援と地域再生モデルを探るために実施した.ここで取り上げたチョッパン地域には,生活が脆弱な中高齢男性や障がいを持つ単身生活者が多く居住しており,韓国では代表的な社会的不利地域の一つである。調査の結果,第一に同地域では民間のきめ細かな対応が有効に働いている点,第二に地域改善に向けた制度的なバリアを解決する必要がある点,第三に同地域が脱野宿など社会的な居住機能を果たしており,地域で住み続けることを望んでいる人々が多く居住している点,第四にチョッパンの経営者及び管理者も地域の肯定的な機能を評価しており地域環境改善への参加意志を示している点がわかった。
  • 住宅確保の実態と問題点を中心に
    葛西 リサ, 大泉 英次
    2008 年 34 巻 p. 255-266
    発行日: 2008年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では大都市の事例として大阪,地方の事例として鳥取を取り上げ,母子世帯の住宅事情及び住宅確保の実態について考察した。その結果,最低居住水準の達成率や住居費負担率については鳥取県が大阪よりも良好だが,両地域ともにこれらの結果は一般世帯よりも低位にあることがわかった。また,いずれの地域においても,母子世帯に対する住宅支援の不備から,母子世帯は離婚等を期に転居する割合が高いが育児や経済的問題から住宅確保が困難となっている事実が明らかとなった。本稿では,鳥取県のDV被害者に対する住宅支援についても検討している。
  • 中越地震による被災集落「法末」を通して
    寺本 晰子, 松川 淳子, 濱田 甚三郎, 宮本 伸子, 森田 美紀, 安武 敦子
    2008 年 34 巻 p. 267-278
    発行日: 2008年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
    対象とした法末集落は,中山間地という地理的条件に,豪雪が加わり,さらに2004年,2007年に震災に遭った。高齢化率が66.4%,集落の担い手不足は深刻で,約20年前から各種対策を講じている。震災復興に際し我々は,建築や景観資源が豊かであることに着目し,それらを学術的に位置づけ,発信する方法を検討した。その結果,法末の民家は江戸末期から明治期までのものが大半を占め,積雪のための補強や,冬季の採光の確保,降雪・積雪時の出入りへの配慮など,雪に対する知恵が集積していた。また試みた魅力の視覚化は映像資料や模型等で行い,遠方の第三者が評価することで集落の人々は自身の持つ魅力を捉え直す機会となり,集落内側に効果があった。
  • 香港の都市再生への取り組みを通して
    鳴海 邦碩, 江川 直樹, 岡 絵理子
    2008 年 34 巻 p. 279-289
    発行日: 2008年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
    日本をはじめアジア諸都市では,高層集合住宅の建設が急速に進んでいるが,その一方で,老朽化した中高層集合住宅のもたらす問題も大きい。そこで本研究では,住民の99%が集合住宅に住んでいる香港で,都市再生局が都市再生の一つの手法として用いている建物再生事業に注目し,その手法を理解した上で都市再生における効果を検証した。観察調査やヒアリング調査の結果,香港での集合住宅再生事業は,抜本的方策ではないが,地域の持続性,住宅市湯の活性化,事業そのものの波及効果,地域を活気づける効果が期待でき,わが国の地区再生に対しても示唆する点があることが明らかとなった。
  • 被災者・行政間における住宅再建計画と再建状況の共有に向けて
    高島 正典, 重川 希志依, 田中 聡
    2008 年 34 巻 p. 291-301
    発行日: 2008年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
    個々の被災者の住宅再建を,被災者と行政が共通の理解のもとで進めていくことは,円滑な支援業務を実施する上で極めて重要である。本研究では,2004年新潟県中越地震で被災した小千谷市の被災者生活再建支援業務に関するエスノグラフイー調査の結果を踏まえ,各被災世帯の被災状況,世帯構成,所得,健康状態といった基礎的情報から,相談内容,申請状況,再建方針までを一元的に管理し,顧客志向の再建支援業務を進める為の被災者住宅再建支援カルテシステムを開発した。また,このシステムを実際に2007年能登半島地震で被災した穴水町に導入し,その有効性を検討した。
  • 中越地震災害での集団移転事業・宅地耐震化事業を中心に
    石川 永子, 中林 一樹, 池田 浩敬, 薬袋 奈美子
    2008 年 34 巻 p. 303-314
    発行日: 2008年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
    新潟県中越地震の復興では,中山間地域や都市近郊の造成住宅地での「地盤災害」による被害が特徴的であった。その復興に際して集団移転をした集落では,宅地のみならず生業に関係する農地の復旧が持続可能な地域づくりには重要である。また,移転事例は,被災程度や移転先立地条件,自治体の復興方針などにより分類でき,居住者の希望や生活再建に特徴があることがわかった。一方,都市近郊の造成団地では,公道の復旧工事にからめて宅地を復旧したため,多数が住み続けることとなったが,住まいの安全性に不安を持ちつつも二重ローン等経済的な理由から団地内に留まっている世帯も多く課題も残っている。
  • 佐々 尚美, 磯田 憲生, 久保 博子
    2008 年 34 巻 p. 315-325
    発行日: 2008年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
    高齢者の生活習慣や温熱的特性に応じた快適な室内温熱環境を検討する事を目的として,高齢者が好む気温の把握および設定環境下における人体反応の違いを把握する人工気候室実験と,日常生活習慣に関するアンケート調査や室内温熱環境の実態調査を実施した。高齢者の好む気温は,平均値では若齢者より高く,その時の生理反応は異なっていた。また,設定気温下の生理心理反応は,平均皮膚温は同様の傾向を示したが,気温が低い場合に高齢者の末梢部皮膚温は若齢者より高く保たれ,血圧は上昇し,体温調節機能の衰えが示された。また,高齢者の中でも,性別,血圧等の違いにより好む気温や設定気温下における人体反応は異なっていた。
  • オランダ東インド会社関連遺跡とその出土資料の分析を通じて
    小林 克, 堀内 秀樹, 岩下 哲典, 金田 明美, 小川 保
    2008 年 34 巻 p. 337-348
    発行日: 2008年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
    オランダ各都市・アユタヤ・ゼーランディア・平戸・長崎(出島)から出土した資料をサンプリングし,胎土分析を行った。この結果,黄色レンガは,オランダ地域からアジア各地にもたらされた可能性が高いこと。平戸・長崎(出島)出土の赤色レンガの多くは台南地域からもたらされた可能性が高いことが明らかになった。更に日本の瓦と同質のレンガが平戸と出島から確認され,日本人によりレンガが生産されていたと考えられる。オランダ式桟瓦も,タイ・アユタヤのオランダ人居住地と,インドネシア・バンテン遺跡からも発掘されていた。アユタヤで確認されたオランダ式桟瓦については,アムステルダム出土桟瓦との比較を行ったが,明確な差異は確認出来なかった。
  • ドイツ「ミニ・ミュンヘン」の背景と我が国への波及事例から
    木下 勇, 卯月 盛夫, 園田 高明, 渡慶次 康子, 中村 桃子, 永島 憲一郎
    2008 年 34 巻 p. 349-360
    発行日: 2008年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
    ミニ・ミュンヘン(MM)とその影響を受けた日本の16事例を含めて「子どもがつくる街」をケースに以下の子どもの参画の要件を抽出した。(1)「遊び」に「本物」を取り入れ,ごっこ遊び?学び?参画の展開。(2)空間は作り込んだ本物似の街の舞台とその体験から自らつくりあげる自由空間の組みあわせがMMの特徴であり,日本では催しの非日常空間と商店街など日常空間が連動する特徴がある。(3)組織・制度面では遊びと参画の専門的職能の発展,組織間の連携,企業,専門家の支援が成り立つ原理や国際的枠組みからの子どもの参画の位置づけが課題。(4)手法としてワークショップに長けたファシリテーター,ジュニアリーダーの役割が重要。
  • 倉方 俊輔, 山名 善之
    2008 年 34 巻 p. 361-372
    発行日: 2008年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
    都市デザインを専攻し,ル・コルビュジエのアトリエで学んだ吉阪隆正(1917-80)は,とりわけ住宅と都市の分野において,現在も考慮に値する数々の成果を生み出した。本研究では,彼の住宅・都市理念の形成過程と特質を,旧蔵資料や論考に基づいて検討した。その結果,終戦前に獲得していた「建築地理学」の方向性が,戦後の幅広い研究交流を糧に独自の「住居学」に結実し,留学中のル・コルビュジエとの出会いが彼と「住居学」の読み替えをもたらした過程が明らかになった。また,それらの総合としての吉阪の住宅・都市の理念が,人間の行動を中心に「住居」の延長として「都市」を捉えることなど,7項目の顕著な特質を持つことが判明した。
  • NPO法人京町家再生研究会の活動実績の検証
    大谷 孝彦
    2008 年 34 巻 p. 1-14
    発行日: 2008年
    公開日: 2018/11/09
    ジャーナル オープンアクセス
    歴史的都市居住施設としての町家の再生は現代社会の求める多くの課題を集約している。「NPO法人京町家再生研究会」の京都における町家再生の活動実績を総括し,再生町家の内容と活動手法の両面における現代的意義を分析する。更に,その現代的意義を根拠に現代の都市住居のありかたの本質について考察を行う。
  • 祇園町南側地区の取り組み
    上林 研二
    2008 年 34 巻 p. 15-26
    発行日: 2008年
    公開日: 2018/11/09
    ジャーナル オープンアクセス
    祇園町南側地区は京都で最も大きい茶屋町であるが,京都市市街地景観整備条例による「歴史的景観保全地区」が指定され,国の伝統的建造物群保存地区制度に準じた支援策による町並み景観保全事業が進んでいる。しかし,当初は指定地区の大半に準防火地域が指定されて,木肌あらわし意匠が規制されるなど建築意匠保全上の困難さを抱えて出発した。ここでは,景観保全を進める上での諸課題が解決されていく経過等を報告し,同様の課題をもつ地区への応援とする。
  • 都市居住推進研究会(京都)の活動の事例から
    大島 祥子
    2008 年 34 巻 p. 27-40
    発行日: 2008年
    公開日: 2018/11/09
    ジャーナル オープンアクセス
    ストックマネジメントの時代において,ストックを活用することによる地域社会や住まい・まちづくりへの効果や影響を評価することが求められている。本論では,京都でユニークな不動産ビジネスを展開している事業者で構成する研究会の活動を取りあげ,本会もしくは会員が行ったストックを活用した住宅・不動産ビジネスの事例を調査・分析する。さらに住宅のストックの質の向上のために必要な仕組み,ストック活用の裾野を広げるための要件,地域と共生する住まいづくりのために必要なプロセスの分析から地域社会の価値を向上させる不動産ビジネスのあり方について考察する。
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