2010 年 36 巻 p. 165-176
大阪市住宅供給公社が,老朽団地の空き家を活用するために,新しい賃貸形式を採用した。初期投資を抑えるために,従前および新規居住者に対して,「原状回復義務なし」「裸貸し」「別宅賃貸」の方式で貸し出した。その事業内容や居住者の住まい方を分析した結果このシステムは経済的にも空間的にも住み手主体のアフォーダブルな住まいを提供する優れた仕組みであることがわかった。さらに,新旧居住者の共存をスムーズに誘導し,団地コミュニティの持続性を獲得する団地再生の原理もみられた。収支面からは,2年足らずで初期投資を回収している。このシステムは特殊解ではなく,団地再生の手法としての展開可能性を持つ。