2020 年 46 巻 p. 201-211
山間にある長野県阿智村清内路集落では,集落中心部には耕地が確保できないため,日当たりの良い斜面の高地に耕作地を求め,そこに夏の間一定期間過ごす「出作り」をしてきた。この風習の現代的な継承のために,経験者による「語り部」の可能性が考えられる。現在では本来の出作りも語り部もほとんど消滅した。本論文ではかつての生活の想起,出作り民家の実態と生活の変化と経緯などを総体的に記録し,先行研究の上にこの地域遺産の地図上へのプロットを作成し空間の実態を明らかにした。伝統的な出作りが衰退する中,本宅と山の家との二拠点の存在を活かし新しい生活スタイルを示唆する家も見られた。また,その地域文化の伝承を進めるエコミュージアムとしての活動実態の調査およびその可能性についても考察した。