都市や建築,集落といった空間のあり方は,経済や技術,人々の価値観などといった社会的事象と密接に関係し,「社会-空間系」を成している。本研究ではタイの山岳少数民族の集落・ユースック村を事例とし,この系のダイナミックな変容を詳細に読み解くことを目的とする。本稿では1983年の集落の成立から2022年現在に至る同村の変容過程を,図面作成とヒアリングを中心に調査した。その結果,1992年ごろを境に社会-空間系が大きく変わり,建築やインフラに関する近代技術の流入,精霊信仰からキリスト教への改宗,国外への出稼ぎで得た資金によるコンクリートブロック造建物の急増などが起こっていることを明らかにした。