獣医麻酔外科学雑誌
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前十字靱帯断裂を呈した猫の一例
岡本 芳晴南 三郎山下 和人松橋 晧
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1990 年 21 巻 2 号 p. 35-38

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抄録

左後肢の跛行を呈する2歳の日本猫に見られた前十字靱帯断裂に観血的な治療を実施した。左後肢膝関節には典型的な脛骨の前方滑り症を確認した。膝関節の再建にはPaatsam原法および5号絹糸 (U.S.P.) を用いたDe Angelis法を併用したが術後8日目に移植筋膜および絹糸の断裂によって前方滑り症が再発し, 筋膜の代わに4号ナイロン糸を用いPaatsamの方法に準じ再手術を実施した。運動制御の目的で患肢にCasting tapeによる外部固定を実施した。術後2週目に外部固定を除去し, 患肢にはリハビリテーションを施したところ, 漸次患肢の機能回復を認めた。摘出した前十字靱帯の組織学的観察で膠原線維の変性像は見られず, 本症の原因は外傷性と考えられた。また, 猫では外部固定は不必要とされているが, 本症例のごとく特に性格のきつい日本猫では移植筋膜の断裂が生ずることが明らかとなり, 猫における本症の外科的整復の一失敗例として貴重と考え報告した。

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