獣医疫学雑誌
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原著
ウガンダの集約酪農地域における牛群管理方法の現状と牛群管理が産乳量・潜在性ケトーシスへ及ぼす影響
三山 豪士Joseph BYARUHANGA岡村 郁夫中辻 浩喜中尾 敏彦及川 伸William MWEBEMBEZI蒔田 浩平
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2020 年 24 巻 1 号 p. 1-10

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抄録

近年ウガンダの酪農業は集約化が進み,牛群管理と乳牛の栄養状態への影響が懸念されるが,ウガンダ南西部の牛群管理の現況は報告されていない。本横断研究は,牛群の飼養管理状況を記述し,飼料給与と乳量・血中ケトン体濃度の関係を調査することにより,この地域における飼養方法の現状を把握し今後の発展のための方向性を見いだすことを目的に実施した。

2016年10月から2017年3月に30農場の506成乳牛を対象に聞き取り調査を実施した。飼料給与が乳量と血中β-hydroxybutyrat濃度(BHB)へ及ぼす効果を推定するため原因図式により交絡因子を選択し,混合効果モデルを用いた多変数解析を実施した。

平均牛群規模は35.5頭,平均乳量は9.8L,外来種は74.5%を占めた。濃厚飼料は40%,粗飼料は70%の農場で給与され,放牧は93.3%の農場で実施されていた。分娩後21日以内の牛のケトーシス(潜在性ケトーシス(SCK)を含む)の有病率は10.8%(4/37, 95%信頼区間:3.0-25.4%)であった。濃厚飼料を給与した牛の乳量(9.20L)は非給与牛(5.95L,p=0.041)より高かった。全対象牛のうち輪換放牧を実施していた牛の乳量(5.78L)は輪換放牧を実施していなかった牛(3.46L,p=0.017)より高かった。飼料給与はBHBに有意な影響を与えなかった(p=0.092)。

ウガンダ南西部では外来種が多く導入されており,適切に栄養管理をすることで高い産乳性を期待できることが示された。

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