2023 年 27 巻 1 号 p. 1-5
世界で問題となっている薬剤耐性菌については,我が国では,AMRアクションプランに基づいて,取組を進めた。その成果等を,役職を離れ,個人的な立場から振り返った。
AMRアクションプラン(2016-2020)では,畜産分野では適正使用・慎重使用を中心とした取組を行ってきた。成果指標については,3薬剤について薬剤耐性率の目標値を設定していたが,1薬剤のみ目標値を達成できなかった。薬剤耐性率は畜種別に異なる点から,畜種別にきめ細やかな取組が課題であった。また,国際的な動向から,抗菌剤の使用量の削減が着目されているが,我が国の畜産分野の動物用抗菌剤使用量は,2016年から2020年までの間,ほぼ横ばいだったことから,今後は使用量の削減の努力が求められると考えられた。
2022年に国連環境計画(UNEP)が,3者協定の薬剤耐性対策の連携体制に参画した。これにより,環境における薬剤耐性対策に取り組むことが表明された。今後の国際的な動向を注視するとともに,我が国でも家畜糞尿由来の抗菌剤や薬剤耐性菌の拡散を制御する手法の研究が進むことを期待しているところである。
本年4月にAMRアクションプラン(2023-2027)が決定され,畜産分野では,新たに抗菌剤の使用量の削減目標が設定された。また,環境分野についても新たな取組が盛り込まれた。
薬剤耐性対策への必要性を関係者が自分ごととして考え,取り組んでもらうためにも,行政は現場に即した取組を推進していく必要がある。