獣医疫学雑誌
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牛伝染性リンパ腫について~疫病の概要と対応の現在地~
宮城県における肉用牛に対する地方病性牛伝染性リンパ腫の対策と課題
松田 敬一
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2024 年 28 巻 2 号 p. 101-107

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抄録

地方病性(成牛型)牛伝染性リンパ腫は牛伝染性リンパ腫ウイルス(Bovine leukemia virus : BLV)の感染が原因であり,牛リンパ腫のほとんどを占めている。感染牛の数%は数か月から数年の無症状期を経て,B細胞性のリンパ腫である地方病性牛伝染性リンパ腫(Enzootic bovine leukemia : EBL)を発症する。EBLを発症すると,効果的な治療はなく予後不良となり死亡する。現在のところ,BLVの感染やEBLの発症を予防する効果的なワクチンは無く,EBLの発症を防ぐためには,衛生対策の徹底によりBLVの感染を阻止するしかない。BLVの清浄化対策を進めるには,牛毎の感染の有無,および感染度合いを把握して分離飼育や淘汰の優先順位を把握する必要がある。これらの把握には血液検査が必須となり,農家に一定の経費を強いることとなる。

宮城県におけるEBLの届け出数は,平成14年の4頭から始まり令和5年では176頭と増加の一途をたどっている。家畜共済における宮城県内のEBLによる死廃頭数は,令和5年度で137頭となり,共済金評価額の合計は約1億円であった。このうち,農場でEBLと診断された牛が42頭,屠場でEBLとして検出され枝肉全部廃棄となった牛が95頭であり,屠場で検出された牛の方が多い。

宮城県では以前より家畜保健衛生所等および宮城県農業共済組合が試験的にBLVの清浄化対策を行ってきた。しかし,これらの対策を実施した農場は宮城県全体の養牛農場数に比べればほんの一部でしかなく,検査費用も無料もしくは一部補助であったために継続できたものと考えられる。

宮城県全体でEBLの発生を減少させるためには,BLVに感染した牛を減らす事が重要であり,県全域でのBLV清浄化対策が必要となってくる。しかし,現在までの試験的清浄化対策とは異なり,宮城県全域で実施するためには,農家負担が必須であり,補助等を含め何らかの対策を講じる必要がある。

令和6年7月に宮城県,全農宮城県本部および宮城県農業共済組合で「宮城県における牛伝染性リンパ腫に係るワーキンググループ」を発足した。今後現実的なBLV対策の実施について協議していく予定である。

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