獣医科学と統計利用
Online ISSN : 1884-5606
ISSN-L : 0913-5499
ツパイ (Tupaia glis) の体温と活動の日内変動
辻 紘一郎龍味 哲夫
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1981 年 1981 巻 7 号 p. 1-6

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抄録
霊長目の中で最も下等な原猿類に分類されるツパイ (Tupaia glis) の特性を検索することを目的として, 体温と活動の日内変動の観察ならびに変動パターンの解析を時系列解析の手法を用い実施した。
供試動物は自家繁殖したツパイ3頭 (成熟雄) で, 実験は恒温, 恒湿, 14時間点燈・10時間消燈の動物室で実施した。体温の測定はテレメトりーシステムにより行った。すなわち, 体温用transmitterを外科的手術により腹腔内に装着し, 無拘束の状態で受信・記録した。同時に活動量記録装置「ANIMEX」を用いて, 活動量の測定を行った。
ツパイの体温は夜間に低く, 35~35.5℃に下がり, 昼間には39~40℃にまで上昇する, 昼夜の差がある二相性のパターンを示した。活動は昼間に集中し, 夜間はほとんどみられなかった。また, 体温と活動のパターンを時系列解析した結果, 24時間周期のいわゆるcircadian rhythmと3~4時間の活動とよく一致したultradian rhythmなどが認められた。以上のことから, ツパイがマーモセットなどのサル類と類似したtropical typeの体温変動を示す動物であること, 体温と活動の関係を解析する上で有用な特性を持つことを知った。また, 体温や活動の変動を分析するために, 時系列解析の手法は有用な手段になると考えた。
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