獣医疫学雑誌
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疫学的アプローチ: 国内企業養豚における財務諸表を利用した経営ベンチマーキング
阿部 慎吾纐纈 雄三
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2004 年 8 巻 1 号 p. 21-28

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抄録
製造業界におけるベンチマーキングは, 成績を連続的して測定し, 比較することで, 成績を改善するための情報と知識を得られることであると定義されている。この定義は, 養豚業界においては, 養豚農場に成績の標準と目標を供給し, それらと比較することで連続的な改善を目指すということに応用できる。日本の企業養豚における財務指標の標準と目標を設定し, さらに指標間の関係を分析するために, 企業養豚23農場から財務諸表のデータを収集したnさらに総資本経常利益率 (ROA) で順位付けし, 上位25%の財務の優良農場 (6戸) とそれ以外に分けた。収集した23農場の平均繁殖雌豚頭数は1, 255頭, 平均ROAは7.46%, 平均売上高経常利益率は7.38%, 平均総資本回転率は1.09であった。相関分析でROAは売上高経常利益率と強い正の相関があったが, 総資本回転率とは相関がなかった。さらにROAは枝肉1kg当たりの支出合計, とくに飼料費と負の相関があった。ROAの高い財務的に優良農場はその他農場に比して, 従業員1人当たりの年間売上高が高く, 枝肉1kg当たりのコストが低かった。この研究結果からROAを改善するためには, 従業員1人当たりの売上高を大きくし, 枝肉1kg当たりのコストを下げることの重要性が示唆された。
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