2017 年 70 巻 1 号 p. 52-55
症例は雑種犬,雌,9歳齢で,右肺後葉に限局した肺腺癌を完全切除し,シクロホスファミドによるメトロノミック療法を行った.術後3カ月目に別の肺葉に転移を認め,ピロキシカムを追加したが,転移病巣は多発性に進行したため,術後10カ月目からさらにリン酸トセラニブを投与した.肺転移病巣の明らかな縮小を認めたが,副作用により,休薬,投与量の減量及び投与間隔の延長を余儀なくされた.徐々に肺病変は悪化し,術後33カ月目に死亡した.リン酸トセラニブは犬の肺腺癌に有効と思われるが,シクロホスファミドとの併用においては無菌性出血性膀胱炎を悪化させる危険性が示唆された.また,本薬剤の長期的投与において副作用である食欲低下や嘔吐は解決すべき大きな問題であったが,シプロヘプタジンやファモチジンが副作用を軽減できる可能性が示された.