生後4日齢で起立不能となり8日齢で尿閉塞を発症した黒毛和種子牛の死亡の原因探索を行った.解剖所見では遺残した臍静脈と尿膜管が臍部に開口し,尿膜管,尿道,膀胱内には線維素が析出し,腎臓,尿管には膿貯留が認められた.病理組織学的検査では塞栓性化膿性腎炎,腎梗塞,腎盂腎炎,壊死性膀胱炎を確認した.肝臓,腎臓,膀胱,尿管,尿膜管を摘出培養したところ大腸菌が優位に検出されたことから,子牛の死因は臍帯から大腸菌が上行感染したことに起因する腸管外病原性大腸菌(Extraintestinal Pathogenic E. coli:ExPEC)感染症と診断した.PCR法による遺伝子検査にて,この大腸菌からはExPECに特徴的とされる病原性関連因子の鉄補足因子遺伝子(iutA,fyuA,irp1,irp2)が検出された.
東洋眼虫(Thelazia callipaeda)は,犬,猫,人,野生哺乳類の眼に寄生し,ショウジョウバエ科マダラメマトイ属が媒介する人獣共通の寄生虫である.今回,神奈川県山間部で13例の犬を東洋眼虫症と診断した(年間平均罹患率0.26%).症例は,雄9例,雌4例,年齢中央値10歳,体重中央値13.1 kgであった.12例が山間部に居住し,10例は室内飼育であった.犬糸状虫予防薬は6例に投与されていたが,発症は6~12月に多かった.回収虫体数中央値は3隻(1~15隻)であった.治療は虫体摘出が10/12例(83%)で有効であり,3例はイベルメクチン注射を必要とした.本症は,保虫宿主となる都市型野生動物の生息地の広がりに伴い発生域の拡大が疑われ,眼症状を示す犬では地理的環境を考慮し鑑別診断に加えるべきである.
国内における法獣医学の認知度を明らかにすることを目的に,インターネットによるアンケート調査を行った.獣医学生のうち58.9%が法獣医学という分野を知っていた一方,臨床獣医師は34.8%が知っていると回答した.2019年の動物愛護法の改正で,獣医師に対して虐待の通報が義務付けられたことに関する質問では,70.6%の獣医学生が知っていた一方で,臨床獣医師は51.3%が知っていたと回答した.臨床獣医師のうち,虐待動物の診療経験があるのは13.9%で,虐待が疑われた動物の診療経験があるのは36.1%であった.アンケート調査の結果,法獣医学は臨床獣医師よりも獣医学生の関心が高いことが明らかとなった.一方,臨床獣医師の半数が虐待された,または虐待が疑われる動物の診療経験があり,法獣医学の重要性が浮き彫りとなった.