飼育下のウサギでは不適切な食事内容や先天的要因などにより不正咬合が好発することが知られている.また,ウサギでは臼歯の多くに歯周炎がみられるといわれている.本研究ではウサギの臼歯における不正咬合と歯周病との関連について調査した.不正咬合の評価は肉眼的に行い,歯周病の評価は歯周プローブを用いて歯周ポケットの深さを測定した.歯周病は不正咬合のあるウサギでは不正咬合のないウサギと比較し有意に罹患率が高かった.歯周病の程度は不正咬合が進行しているほど重度であった.また,歯周病が重度なほど根尖膿瘍の罹患率は高かった.歯周病罹患率が不正咬合のあるウサギで有意に高いことから,歯周病の発生に不正咬合が大きく関与している可能性があり,また,重度の歯周病は根尖膿瘍などさらに複雑な病態に進行する可能性があることが示唆された.
神奈川県食肉衛生検査所で過去15年間に発見された牛の末梢神経鞘腫瘍(PNST)7例の病理学的特徴を解析した.その結果,6例がホルスタイン種,1例が黒毛和種で,平均月齢は144カ月であった.肉眼所見では,腫瘍は胸壁,心臓,縦隔,腕神経叢,肝臓,膵臓,副腎,腹大動脈に認められた.6例では腫瘍は多中心性に発生し,一部で半透明ゼラチン状を呈していた.組織所見では,腫瘍はいずれも神経鞘腫の組織像が主体であり,一部で神経線維腫の領域も認められた.半透明ゼラチン状の腫瘍は主にAntoni B型の領域(B型)からなり,牛の神経鞘腫でもB型が主体となりうることが明らかとなった.また,腫瘍細胞の核内に空胞が認められた.免疫染色では,神経鞘腫の腫瘍細胞はS-100にびまん性に,神経線維腫の腫瘍細胞は散在性に陽性を示した.