2017 年 70 巻 4 号 p. 229-234
本研究は,犬及び猫の歯垢を,位相差顕微鏡を用いて口腔トリコモナス原虫の存在の有無を調査し,メトロニダゾールの投与の効果を検討したものである.調査対象は犬65頭,平均年齢は7.8歳,そして猫38頭,平均年齢7歳の歯垢とした.本邦での犬及び猫の口腔トリコモナス原虫の調査は初めてであり,犬27.7%,猫10.5%に確認できた.口腔トリコモナス原虫が観察された犬と猫には,抗原虫薬メトロニダゾールを投与した.その結果,口腔トリコモナス原虫は本実験系では検出されなくなり,投薬前と比べて歯肉炎や口臭の改善が認められた.以上から,口腔トリコモナス原虫の寄生が認められた歯周炎に対しては,メトロニダゾールの投与が有効であると考えられた.