抄録
1) 馬, 牛, 家兎の消化管内容を胃 (牛では第1胃, 第3胃, 第4胃), 12指腸, 空腸, 回腸, 盲腸 (前部および後部), 結腸 (前部および後部), 直腸の9部位 (牛では11部位) について, VFA, 糖, pH, 水分を測定した.
2) VFAは牛では第1胃内容中に最も多く含まれ, 第3胃, 盲腸, 結腸内容にも, かなり多量に存在している.
3) 馬および家兎の消化管各部の内容にもVFAはかなり高濃度に存在するが, その産生の主な座は盲腸と結腸である.
4) VFAは内容が第1胃から第4胃にいたる間に明らかに吸収される. また牛, 馬, 家兎では結腸および直腸においてVFAの吸収があると思われる.
5) 糖濃度は牛, 馬, 家兎のいずれの場合にもVFA濃度と反比例して増減していた.
6) 馬の消化管内容中から検出されたVFAは酷酸, プロピォン酸で, 酪酸およびC5以上のVFAは認められなかった.
7) 水分は牛, 馬, 家兎いずれも小腸内容が最も高い. 牛の第1, 4胃および馬の胃内容も比較的多い水分を有するが, 家兎では少なく, 殊に盲, 結腸および直腸では, 牛, 馬に比較してきわめて水分量は少い.
以上消化管内容のVFAを各種動物について定量したが, 馬においてはVFAが消化管のいずれの部位においてもかなり存在することが認められた. とくに盲腸, 結腸では, 非常に高濃度に存在することがわかった. このことはきわめて興味ある事実である.
VFAの栄養生理学的意義は従来, 反芻動物においてとくに研究が行われ, 非常に重要なものであることが立証されてきている.
しかしながら, 反芻動物以外の動物ではVFAの栄養学的意義は, ほとんど考慮されておらず, 同じ草食動物である馬においてもしかりである. この実験に見られたように, 非常に大量のVFAが消化管で産生されているからには, それが吸収された後, 馬の栄養代謝に重要な役割を果していることは十分考えられるところである.