日本獣医師会雑誌
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急性鼓張症の予防治療に関する研究
II緬羊に対する表面活性剤の予防効果について
篠崎 謙一千葉 功柏崎 守岩崎 繁幸須原 賢治仙波 喬
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1962 年 15 巻 7 号 p. 266-272

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抄録

100頭の成雌緬羊を4群に分ち, 1群を対照区とし, 他の3群を試験区とした. 供試剤としてP剤 (プロノン), Si剤 (シリコーン), So剤 (ノニオン) および大豆油を用いた. これらの供試剤を毎朝1回放牧前に投与し, できるだけまめ科牧草の多い放牧地に26日間午前, 午後2回, 4~5時間放牧し, ブロートの発生数によりその予防効果と比較するとともに, ブロートの発生要因として, 草地および気象との関係を調べた.
1) 3種の表面活性剤のうち, P剤のみ著明にブロートの発生を減じたが, Si剤, So剤はP剤に比し予防効果は少なかった. また大豆油は午前中2~3時間放牧に対し予防効果が多少みられたが, 午後には効果がなかった.
2) 各供試剤投与後放牧した緬羊の第1胃内容を投与後3時間および8時間に採取し, その表面張力, 起泡能の低下度を調べたところ, P剤のみ著明に有意の差を示し (P<0.001), 長時間消泡作用があり, Si剤, So剤および大豆油は投与後3時間でも消泡効果は十分でなかった.
3) 各供試剤の連続投与による第1胃内醗酵状態を低級脂肪酸濃度について比較したところ, 供試剤はいずれも第1胃内醗酵に悪影響はなかった.
4) 各供試剤連続給与の動物の成育におよぼす影響は対照区と差異なく, 同じような生体重の動揺増加を示し, 動物の健康に悪影響はなかった. また動物の嗜好性はSo剤を除き, 極めて良好である.
5) ブロートの発生に対する草種の関係は, クローバー牧草の割合の増加, 坪当り草量の増加に伴ない発生を増加する傾向を示した.
6) ブロートの発生に対する気象の関係は, 草種ほど明瞭でないが, 気温25~28℃, 湿度50~65%において増加し, 炎暑, または曇天冷涼の天候では著るしく発生を減じる傾向を示した。
7) 全期間を通じ供試動物の42%は全然ブロートを発生しなかったが, 残り58%は1~18回ブロートをおこした.
なお本試験実施に対し, 岩手大学農学部菅原伯, 宮野方臣, 宮脇善雄, 加藤宏志, ならびに岩手種畜牧場大川広衛, 佐々木種畜課長, 杉山調査係長の諸氏の側面的援助を深謝いたします.

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