日本獣医師会雑誌
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1982年に発生したイバラキ病
打越 律男江永 直樹下平 秀丸青木 保子南川 藤夫徳永 光伸今村 重春原 利視宮地 万吉梶原 忠彰
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1983 年 36 巻 11 号 p. 648-652

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抄録

1982年10月から11月にかけて, 佐賀県下の3頭の牛に嚥下障害を主徴とする疾病が発生し, 7日から10日の経過ですべて死亡した.主要な臨床症状は, 軽度の発熱, 流涎, 嚥下障害および嘔吐であった.剖検により, 舌下面の潰瘍, 食道粘膜筋層における白色斑の散発・第四胃粘膜の充血および潰瘍形成が認められ, 組織学的検査により, 食道および舌の筋線維の凝固壊死, 舌下面粘膜の壊死と潰瘍形成, 心筋線維の凝固壊死が認められた.ウイルス分離を発病牛と同居牛のそれぞれ1頭の血液について試みたが, すべて陰性であった.イバラキウイルスに対する中和抗体は, 発病牛すべてに, また同居牛6頭中5頭に検出された.
これらの成績から, 今回発生した牛の疾病は, イバラキ病であると考えられる.日本における本病の発生が1960年以来22年ぶりに認められた.

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