日本獣医師会雑誌
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イヌにみられた消化管重複症の1例
大石 明広坂本 紘田代 哲之安田 宣紘北野 吉秋
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1987 年 40 巻 1 号 p. 54-57

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抄録

8ヵ月齢の雌のセッターの腹腔内に腫瘤2個が認められ, 受診まで無症状のまま経過していた. これらの腫瘤は, 生後約40日頃より認められていた. 種々の検査 (触診, X線検査, および超音波断層画像検査) により, 両腫瘤は硬く, 可動性を有し, 液体を充満させていることが明らかとなった. さらに, その大きさもテニスボール大とソフトボール大であり, 腹腔内中央部に位置していた. 以上の検査結果より, 腹腔内嚢胞と臨床的に診断されたが, さらに確実な診断を得るために試験的開腹が実施された. 両嚢胞は大網に包まれており, 小型の嚢胞は一部胃大弯部と漿膜で連続していた. また, 血管分布は左胃大網動より分枝した血管の分布を受けていた. 大型の嚢胞は小型の嚢胞とは分離しており, 脾動静脈由来の分枝血管が関与していた. 肉眼的および組織病理学的に, これらの嚢胞粘膜の構造は胃底粘膜の様相を呈していた. したがって, 以上の所見により本症例は臨床的ならびに病理学的に, 分類上, ヒトにおける消化管重複症と非常によく類似していた.

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