日本獣医師会雑誌
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ポックリ病が発生していた農場の子牛群における寄生虫調査
井手口 秀夫松田 道幸平 詔亨西立野 誉西 慎二郎
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1992 年 45 巻 10 号 p. 747-751

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抄録

宮崎県下において原因不明の突然死 (ポックリ病) が発生したY農場において, 1986年6-11月まで2週間隔で寄生虫の調査を行った. 調査牛は同年3-6月に導入された新生子牛で導入時期が異なる4群計20頭であった. 検査は新鮮便を用いたマックマスタ-法による簡易法を行った. 乳頭糞線虫 (SPL) 卵は20/20例 (感染率100%) から検出された. この虫卵は群単位で飼育開始後2週より検出され, その後約4-6週にEPG値のピ-クを認めた. EPG値10,000に達する例が多数みられたが, 虫卵は秋季に消失した. コクシジウムのオ-シストは19/20例 (感染率95%) から検出されたが, OPG値は5,000以下の例が多かった. 鞭虫卵は少数例に散見され, その最高EPG値は800にすぎなかった.
牛群の中で最もSPLのEPG値が高かった2頭が死亡した. 11月の死亡例はポックリ病と思われたが, 12月の死亡例は衰弱死であった. 全体としてみるとSPLの濃厚感染時期は例年の当農場におけるポックリ病の発生時期とほぼ一致したことから, 乳頭糞線虫濃厚感染と牛の死亡との関連が示唆された. 今回, ポックリ病発生農場における経時的な寄生虫学的調査結果により, オガクズ牛舎における乳用雄子牛飼育群の寄生虫の感染状況を初めて明らかにした.

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