日本獣医師会雑誌
Online ISSN : 2186-0211
Print ISSN : 0446-6454
ISSN-L : 0446-6454
犬肝流入血行遮断時の酢酸加リンゲル液の代謝効果
坂本 吉正安藤 博文小林 国男松下 博治鈴木 立雄鈴木 嘉彦中谷 壽男
著者情報
ジャーナル フリー

2000 年 53 巻 7 号 p. 463-468

詳細
抄録

乳酸加リンゲル液 (LR) と酢酸加リンゲル液 (AR) を, 犬肝流入血行遮断時に投与し, 40分間肝虚血と再灌流30分後の影響を検討した. LR群では虚血と再灌流により嫌気的代謝とアシドーシスが進行したが, AR群では有意差はないものの改善傾向がみられ, 肝臓以外の組織でも代謝されうるARがアルカリ化剤として機能したと考えられた. ケトン体の動脈血濃度はLR群では肝虚血で激減し動静脈較差もなくなったが, AR群では動脈血ケトン体濃度は低下せず, 較差も維持されて末梢組織でケトン体が利用されていることを示した. また, AR群では腎静脈血ケトン体濃度が動脈血濃度を上回り, 腎臓でのケトン体産生の可能性を示した. 再灌流30分後の肝臓1g当たりのATP+1/2ADPはAR群が有意に高値で, ARによる末梢組織での代謝改善が, 再灌流後の肝臓への負荷を軽減したと推測でき, 肝虚血時の輸液剤としてARが有用と考えられた.

著者関連情報
© 社団法人 日本獣医師会
前の記事 次の記事
feedback
Top