日本獣医師会雑誌
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牛ウイルス性下痢ウイルス持続感染牛多発事例における5'非コード領域およびE2遺伝子の解析
林 みち子村上 俊明高井 光山口 徹舟木 理長井 誠
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2005 年 58 巻 11 号 p. 741-745

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抄録

2003年, 1酪農団地内の3戸 (A, B, C) の農家において, 3~12カ月齢の育成牛6頭 (A農家4頭, B農家およびC農家各1頭) が牛ウイルス性下痢ウイルス (BVDV) 持続感染 (PI) 牛と診断された. 原因ウイルスの疫学を明らかにするため, 分離株の遺伝子解析を行った. 51非コード領域 (51NCR) の解析では, 6株中5株 (A農家4株とC農家1株) の分離株の塩基配列は同一であり, この酪農団地とは別の地域で1999年に分離された1株 (IS17/99) とも一致したが, B農家の1株とは90.8%の相同性であった. いっぽう, E2遺伝子の解析では, A農家分離株4株と隣接するC農家分離株は高い相同性 (99.1~100%) を示したが, 5'NCRが同一であった他の地域の分離株とは94.9~95.7%であり, 同一団地内であるが交流のないB農家分離株とは70.4%の相同性を示したのにすぎなかった. また, B農家分離株は隣接する農家で1999年にPI牛から分離された株と5'NCRおよびE2遺伝子が100%の相同性を示し, 隣接農家からのウイルス伝播が示唆された. 以上から, E2遺伝子の解析は疫学的な調査に有用であると考えられた.

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