抄録
犬鉤虫感染犬の血清蛋白像を, 主として臨床例について観察し, 臨床症状・貧血・宿主の年令および肝機能との関係を検討するとともに, 一部の症例について, 血清複合蛋白分画の動態を明確にした. さらに, 人工感染時ならびに瀉血貧血時における血清蛋白の動態を追究した. その結果, 犬鉤虫症にみられる血清蛋白の動態は, 臨床症状との現象的な関係を意味するという範囲では, 感染ならびに障害に対する宿主の反応を反映することを認めた. そして, alb. の減少は, 貧血あるいは毒素などによる障害に基づく, 宿主の蛋白代謝の異常を意味しており, また, 障害や炎症の程度など, 宿主の症状と関係がある点では, α2-glob. 分屑の態度が最も規則正しいことを知った. 一方, 宿主抵抗の増大を知る面では, γ-glob. の動態に意義があることを, 本症の場合においても認めることができた. 終りにのぞんで, 終始御懇篤な御指導と御校閲を賜わった大越伸教授に, 衷心より謝意を表します. また, 実験遂行上, 種々協力して下さった教室員各位に深謝します.