1966 年 28 巻 3 号 p. 107-118_8
鶏痘,カナリヤ痘および鳩痘のウイルスを種々の細胞に感染させ,超薄切片法により電子顕微鏡をもって研究した。ウイルス粒子は検索した総ての種類の細胞において同定され,それらは不完全,球形,早期中間,後期中間および成熟の5型に分類された。これら5型のうち前の4型は未熟あるいは発育型と,成熟型はウイルス発生の終末段階にある粒子と考えられた。感染細胞には2種の細胞質封入体が観察された。その1つは光学顕微鏡で見られる古典的封入体に一致し,多数の成熟型粒子と高電子密度の基質からな・り,カナリヤ痘ウイルスに感染した培養細胞を除き,他の総ての種類の宿主細胞において容易に同定された。他の1つはマトリックス封入体と名づけられたもので,微細顆粒状および微小線維性物質からなり,細胞質において,電子密度の高い部域として認められ,通常,種々の発育型粒子と共存した。この封入体は総ての宿主細胞- ウイルス系において訛明され,ウイルスの増殖過程において重要な役割を演ずるものと解釈された。古典的封入体はマトリックス封入体で発生分化した成熟型粒子の集筬と,その大部分はリピドと考えられる高電子密度の物質の二次的加入によって形成 されるもので,ウイルス増殖に対して必須な構造ではないと見られた。鶏痘,カナリヤ痘および鳩痘のウイルス粒子の間には,それらの形態と発生様式において明確な差異はないようであった。ウイルス粒子と細胞質封入体の存在を除けば,ウイルス感染に対して特異的と考えられる細胞病変は見出されなかった。