抄録
1. 犬に, 後肢のみによる2肢駐立を強要して筋を疲労せしめ, 腓腹筋から単一NMUの放電を経時的に記録して, 放電間隔時系列を求めた. この時系列から, 方式に従って, H型変動とR型変動を分離して取り出し, H型変動の周期(H)と, R型変動の周期(T)および減衰比(Q)とを算出し, τ-H相関図とQ-T相関図を描いて, 考察を加えた. 2. 筋疲労の進行にともなって, H型変動の周期の延長, すなわち, C曲線の傾斜の増加が起こった. これを, 筋の活動に参加する上位神経機構の活動要素の増加と解釈した. 3. R型変動では, 駐立直後, 周期が一時的に減少するけれども, その後は次第に延長した. 前者を強制伸展による求心性インパルスの増加, 後者を筋疲労による求心性インパルスの減少と解釈した. 4. 上述の結果から筋疲労時には, まず求心性インパルスの減少により, 脊髄準位の神経機構の自己調節機能が減弱し, その補償として, 筋の活動に対する上位神経機構の参加が増強してくると考えた.