1967 年 29 巻 4 号 p. 171-175_2
近来,諸外国においてバラワクチニア・サブグループに属するボックス・ウイルスが牛から分離報告されているが我国においては未だその例を見ない。本報告は,昭和41年夏,千葉県において牛からバラワクチニア・サブグループに属すると思われる1株のウイルスを分離したので,その分離状況,ならびに同定成績について記載するものである。ウイルスの分離千葉県の1農場において導入して間もない1頭の牛の乳頭および乳房に多数の赤色の発痘を認め,その陣旧なものはすてに痴皮を形成していた.この痴皮および膿庖を採取,処理し牛皐丸単層培養細胞に接種したところ,21日目に細胞変性を認めた.この細胞変性は細胞の円形化とフォーカス形成を主徴とし,しだいに細胞シート全域に拡がった。また感染細胞原形質内には好酸性の封入体を認めた.ウイルスの同定分離ウイルスは発育鶏卵の漿尿膜上にポックを形成せず,またワクチニア・ウイルスの免疫血清で中和されなかったが,熱不活化したワクチニア・ウイルスを再活性化した.本ウイルスは平均孔径220mμのMi111porcfilterを通過したが,100mμのものは通過しなかった.ネガティブ染色試料の電子顕微鏡観察により,ウイルス粒子の大きさは129~133×243~287mμと推定され,またウィルスの構造はバラワクチニア・サブグループに属する既知ウイルスの記載と極めて良く一致した.以上の成績から今回の分離ウイルスをバラワクチニア・ウイルスと同定した.